横浜パーソナル・サポート・サービスの現場から
18日、神奈川ネットの新春のつどい「未来につなぐ働き・暮らし」を開催しました。
第一部では、横浜パーソナル・サポート・サービス、 「生活・しごと∞わかもの相談室」事業を統括されている鈴木晶子さんと、* サポーターとして横浜PSS事業にも参加されているNPO法人ワーカーズ・コレクティブ協会の岡田百合子さんを迎え、PSS事業から見える課題についてお話いただきました。
PSSは、様々な生活上の困難に直面し社会的に排除されている人や排除リスクの高い人に対する支援事業で、 2010年度から内閣府の3年間のモデル事業と して実施されてきました。対象や制度を限定する縦割りの体制ではなく当事者のニーズを丸ごと受け入れたオーダーメイドのサポートです。
横浜PPSの登録者は800人を超えており、 登録者の抱える問題領域も仕事関係、メンタル、DV・虐待、健康、教育関係、多重債務など多岐にわたります。登録者の抱える問題領域の70%が仕事関係で、就労支援はその半分、残りは労働問題やメンタルの問題となっており、弱い立場にある人が厳しい環境下で働いている状況も見えてきます。また、登録者のうち生活保護受給者は2割、非受給者が8割であり、PSS事業は生活保護に至る前のセーフティネット機能として期待されます。鈴木さんからは、 重点取り組みとして、 困難を抱える生徒の多く在籍する高校との連携“田奈PASS”の取組みや、児童養護施設等との連携を模索されていることも報告されました。
ワーカーズ・コレクティブ協会は、これまでも県や市から数々の障害者・若者の就労支援事業を受託してきましたが、今年度は、 横浜市のパーソナル・サポート・サービスによる中間的就労モデル事業を受託、10代から30代までの世代を対象とし、いくつかの困難を抱える人達の就労支援に取組まれています。
例えば、就労経験はあるが、生活基盤が弱く不安定、多重債務からリストラにあった人、野宿経験者、生活保護を受けている人、親との関係や家族の問題を抱えている人、福祉施設で育った人、ひきこもり経験者など33人が参加されています。(12月現在)短時間の働き方を選ぶ事も可能であり、地域密着の働き場であること、生活面での助言や地域の情報が豊富にあること、さらにはワーカーズのネットワークを生かした伴奏型の支援も可能であることなど、就労支援におけるワーカーズ・コレクティブの有効性、とりわけ「中間的就労」の場としての可能性も報告されました。
一方、昨年まとめられたPPS事業の検証においては、即効性のある雇用効果が得られるケース が限られていることや、社会的排除リスクの高い人に ついて、就労に至らなくても、中間就労の場や機会を得て、 本人の社会生活の自立、さらには経済的自立へとステップアップするといった、より長期のタイムスパンの中での成果も求められているとの指摘もあります。
PSSモデル事業は今年度いっぱいで終了し、今後は生活支援戦略に引き継がれ法制化されることになります。 生活支援戦略には多様な就労機会として中間的就労も位置づけられています。 「生活・しごと∞わかもの相談室」事業や、ワーカーズ・コレクティブの実践を生かした個別的・ 継続的・包括的な支援を進める制度となるよう、現場の皆さんとともに政策提案に取組みます。
* サポーター : 横浜PSでは15の団体からパーソナル・サポーターが集まって一般社団法人インクルージョンネットよこはまを設立