2001年4月に施行された「電気用品安全法」が、4月から本格施行となり、安全基準を示す「PSEマーク」のない一部の中古電化製品が販売できくなくなります。
ところが、施行直前、リサイクル業者や音楽関係者から批判が強まり、経済産業省は、「文化的価値のある電子楽器などを同法の特別承認制度を用いて本格適用から除外する」と発表しました。やはり、坂本龍一さんや東儀秀樹さんといったメジャーなミュージシャンや、彼らの呼びかけで、わずか2週間で集められた75000筆の署名の力は大きいのでしょうか。 この法律については、これまで5年間も経過措置があったのに、業者への説明が始まったのは、今年の2月。混乱の一番の要因は、経済産業省の周知不足であり、業者の戸惑や怒りは当然のものです。恥ずかしながら、私も、2週間ほど前に、「MarshallのオールドやPeaveyの真空管アンプは、もう中古楽器店では手に入らなくなる!」というニュースを見て、初めて、この法律を勉強することになりました。
私は、かつて、60年代もののフェンダープレシジョンベースを愛用していましたが、新品では出ないような魅力ある音を出せる楽器が’ヴィンテージ楽器’。坂本龍一さんの「中古楽器市場が危機に陥る。同法は文化破壊だ。改正を望む」の意見にも共感します。しかし、経産省の言う「文化的価値のある電子楽器」の判断基準は何なのでしょうか。法制度をつくるプロセスで専門家の意見が取り入れられる事もありませんでしたが、文化的価値などというものは、国に判断されるものではないと思います。
また、この法律で規制対象となる「特定電気用品」(構造又は使用方法その他の使用状況からみて特に危険又は障害の発生するおそれが多い電気用品)は「政令」で定めることにもなっています。このような、行政主導の色合いの強い手法も問題です。
経産省によると、中古製品がPSE法の技術基準に適合しているか確認できれば,製品にPSEマークを付けて販売可能とも言っていますし、検査のために無料で検査機器を貸し出すそうです。(無料といっても、経費は税金)検査は、1000Vもの電圧をかけて漏電の有無を調べる通電試験です。その検査の様子が、NHKテレビでも放映されていましたが、試験そのものが危そう。
試験設備を導入し、「リサイクル事業者」も届け出を出せば、即、「製造事業者」になることがでるという規制緩和策もあります。規制緩和と安全性の担保と言うテーマについては、この間、様々問題提起されてきたことです。
しかし、一方で、PSEマークがなくてもレンタルや個人売買、業者が仲介手数料だけをもらう委託販売はできる、輸出も可能とされています。
一体、この法律は、何を目指すものなのでしょうか。電気製品の安全性の確保を目的とするものであるのなら、あらためて、その根本に立ち返り、議論すべきです。