高齢化が進めば給付の拡大は避けられないのですから、財源の議論が必要であることは理解します。しかし、まず、現在提供されている事業について、費用対効果の視点から疑問のある施策は点検評価すること、ベーシックな生活支援サービスを安定的に提供するための対策を進めることなどよって、制度への信頼を高める努力が求められます。制度に信頼が無ければ若い世代は未来へ投資できません。その結果、民間の保険で自助努力します!という人や保険料の滞納者も生まれてしまい制度は崩壊します。
06年度の制度改定により介護予防が介護保険に組み込まれ地域支援事業として制度化されました。次期計画素案でも、引き続き増え続ける給付費に対し介護予防を進めることや、地域包括支援センターの機能の充実など基本的な方針が示されています。介護予防メニューとして介護ボランティア・ポイント制の導入も盛り込まれました。これは、元気な高齢者が特別養護老人ホームなどで話し相手などのボランティアに参加し、その活動をポイント化するもので、他都市の事例(全国9自治体で実施)も踏まえ、一回50円・年間上限6000円程度で保険料への充当や現金支給を行なう可能性も示されています。ボランティアの受入コーディネートやポイント計算の事務作業など新たな仕事は誰が担うのでしょうか。介護保険の財源で行なう事業でしょうか。
介護保険は、そもそも介護が必要になったときに支給される保険です。40歳以上65歳未満の第2号被保険者は、将来のリスクに対して得られる介護サービスの費用を負担しているはずです。どういうリスクに対する保険制度なのかが、どんどん曖昧になっていきます。
予防給付(要支援者へのサービス)・介護予防事業(特定高齢者に対する予防事業)については、利用率が低く、総務省の「介護保険事業における行政評価・監視」でも、費用対効果を明らかにすべきという厳しい評価がなされています。迷走し続ける介護予防。制度やサービスメニューがコロコロ変わる現状では、自治体の職員も複雑な制度を理解するのに精一杯で創意工夫を生かすいうようなステージにはなかなか進めません。