木との付き合いを考える〜青空ミニフォーラム〜
紅葉シーズンでもないのに赤茶色に変色した大木、穴だらけの幹、根本にはおがくずのようなものがたくさん溜まっている。これらが、カシノナガキクイムシ(カシナガ)によるナラ枯れ被害の特徴です。
横浜市内でも2018年度にナラ枯れ被害が確認されて以来、被害が拡大、寺家ふるさと村などでも散見されます。昨年度は、青葉土木事務所で33公園、計269本のナラ枯れを把握しているそうです。そんな状況を心配された方の声を受け、フィールドワークを企画。11月7日、約30人の方が桜台公園に集まりました。
樹木医さんのお話を聴く
当日、ナビゲートしてくださったのは樹木医の持田智彦さんです。
まずは、ナラ枯れのメカニズムを学ぶことから。
カシナガの新成虫は6月ごろに羽化。→新成虫は新しい住処にふさわしいコナラなどの元気で大きめの木を選び、幹をかじって穴を開けて穿入、その際、「ナラ菌」が持ち込まれる。→集合フェロモンを出して他のカシナガを呼び込み産卵。→幼虫は幹の中で成長し次の年には成虫となって新しい木へ飛んでいく。こうしたサイクルで「ナラ菌」が拡散され被害も広がってきた。ということのようです。
一方、穿入を受けた木は、免疫細胞が過剰に反応してしまい、その結果水切れを起こし枯れてしまう。(枯死率は3割程度だそう)こんなことが起こっていたのですね。
粘着シートでカシナガを捕獲する「カシナガホイホイ」や注入薬剤と言った対策グッズも紹介いただきましたが、防除効果の高い注入薬剤は1本4万円もするそう。こうした対策を実施することについて横浜市は、「既に市内全域の樹林地に広がっている状況であることから、1本1本に対し実施することが困難な状況」という見解のようです。
林野庁のHPのデータを見ると、全国のナラ枯れ被害量のピークは2010年でその後は減少傾向にはあります。持田さんも、すでにピークアウトを迎えており、今後爆発的に増えることはないのではないかとのこと。しかし、今後ブナ科以外の他の樹種で被害が起こらないとも限らないという厳しい見立ても聴かれました。
生活と密接に関わってきた山の中の木々
ナラ枯れそもものは、戦前からあったようなのですが、なぜ急速かつ広範囲に被害が拡大してしまったのか?それを考えるヒントの一つは、カシナガは比較的大きな木を好んで穿入するということ。
定期的に伐採されなくなった雑木林では太い木ばかりが目立つようになっています。
かつては10年〜20年経ったコナラがあれば切ってしまっていたし、薪や木炭にもなっていた。伐採された雑木林には光が入り、新しい芽も出てくる。それを繰り返してきたけど、今はどうだろう?
持田さんは、ナラ枯れの問題も木と人の付き合いが変わってきたことの弊害だと言います。
どう管理しどう付き合うか。あらためて、視点を変えて、昔のような木との付き合いを考えてみることも対策に繋がるのだということに気づかされました。
*桜台公園では、公園愛護会の皆さんによって枯死した木を伐採し薪にして希望者へ提供されています。薪ストーブをご使用のご家庭でのご活用はお勧めです。(キャンプなどで遠くに持ち出したり使いきれない薪を放置してしまうとナラ枯れ被害が広がる恐れがあるので、原則県外には持ち出さないなどのアドバイスがありました。)