「コールトリアージ」への不安

12月議会で、救急条例が制定されました。救急条例制定により「トリアージ制度」が導入され、119番通報時にコンピューターによって緊急度や重症度を自動識別し、その情報に基づき出動隊員数も弾力的に運用することになります。現在、年間16万件の救急車の出場要請のうち、約1000件(0.6%)ほどが救急車をタクシー代わりに使うような非常識な119番通報とのことです。この数字をどう捉えるかという問題はありますが、高齢化や核家族化が進む中、私たちも日頃から顔の見える関係を作れるよう、特に、福祉事業に携るものとして、地域の相談窓口となれるように努力したいと思います。横浜市としても、全てを救急車による搬送に頼らないためにも、救急相談サービスをスタートさせる予定ですが、119番通報と同様に多くの市民に認知してもらえるよう工夫も求められます。
私は、トリアージというのは、大規模事故、災害時といった緊急時に行われるものと認識していました。2005年、JR福知山線脱事故が発生した際のトリアージの課題については、アンダートリアージ(実際よりも軽度に判定する)・オーバートリアージ(実際よりも重度に判定する)の両事例が報告されていますが、多くの遺族が監察医の検証を求めたことなど、現場での判断の難しさが伝えられています。このシステムを日常的に導入するとすれば、当然、判断誤差についても検証が必要となります。また、通報時に行う「コールトリアージ」は、現場における判断よりも、さらに判断誤差が生じるリスクを抱えています。
昨年、横浜市が2週間ほど実施したトリアージ検証結果を見ると、1103件中、86件(7、8%)がアンダートリアージだったことが分かっています。通報を受けた職員が情報をコンピューターに入力し、コンピューターが自動識別するというしくみです。コンピューター入力という新たな作業へのストレス、入力ミス、システムエラーなどによるリスク増加への不安もあると思います。「アンダートリアージの責任を負うことを考えれば、オーバートリアージ気味に判定することを選択せざるを得ない」、さらには、「とにかくまず出場だ!」という現場の声があがるのも致し方ないのではないでしょうか。
以上の理由から、私はこの条例案に反対しました。
市は、トリアージを導入することで、救命率の向上が期待され、救急搬送の公正性・公平性が確保できるとしていますが、今後も、継続的に検証し情報を公開するとともに、救急、医療体制の連携・強化に向けて取り組むことも必要です。