「小規模保育事業所数」全国No.1の埼玉に聞いてみた
保育の課題といえば、まず、「保育所に入りたいのに入れない」という待機児童の問題が浮かびます。待機児童問題が語られる時の「入りたい保育所」や「足りない保育所」は認可保育所。この10年の間に認可保育所の整備はずいぶん進みましたが、待機児童を抱える多くの自治体で、保育所整備が必要な地域で活用できる用地の確保が難しくなっています。昨年の4月にスタートした「子ども・子育て支援法」では、新たに小規模保育事業も認可事業(国の基準をクリアした施設を市町村が認可)として位置付けらました。将来的な人口動態も考慮し、必要なエリアにタイムリーに保育所を整備できる小規模保育事業を展開することは、自治体としてメリットの多い取り組みです。小規模保育事業の運営に関ってみて、子どもの発達に応じた保育を行え、保護者ともゆっくり向き合うことができる良さも実感しています。
厚生労働省の資料によると、今年度4月の時点で、小規模保育事業は全国で1655件認可されています。都道府県別のデータを見ると、埼玉県が231件で全国トップとなっています。そこで、さいたま市、並びに埼玉県の取り組をうかがってきました。
さいたま市は、すでに46か所の小規模保育事業所を認定(*1)しています。認可外保育施設を、できるだけ国の制度を活用できる小規模保育事業への移行進めるという方針もあり、2014年6月には、市が独自に認定していた保育施設「ナーサリルーム」「家庭保育室」「地域型事業所内保育施設」(*2)や、その他の「届出施設」も含めた200近い事業者に対して小規模保育事業の説明会やアンケートを実施しています。保育者の育成・確保に向け子育て支援員研修を実施したことで、B型施設も一定のボリューム(21か所)で展開できています。事業所内保育を地域に開くことで小規模保育事業として認定していることも特徴です。認可化にあたって整備助成は行っていないそうですが、来年度も小規模保育17箇所(認可保育所は16箇所)の開設を予定しているとのことです。
埼玉県少子政策課でも、同様のお話をうかがいました。「家庭保育室」(県と市町村が二分の一ずつ助成)の定員上限が19人で小規模保育と同規模であり、施設基準も似通っていたことや、改めて施設整備の必要がないことから移行がスムーズに進んだと思われるとのことでした。今年9月度実績で小規模A型で1,170人、B型で1853人が利用しています。「5年くらいかかるのではないかと見込んでいたが、予想を上回るスピードで小規模保育への移行が進んだ」、「設備的にも人的にも恵まれ、資源が蓄積されていた」と評価されていました。
2015年度は、埼玉県が「子育て支援員研修」を実施しています。子育て支援員研修の対象者は、規模保育などの保育従事者のみならず、放課後児童クラブの補助員や児童擁護施設の補助的職員、ファミリーサポートセンター事業の提供会員と、非常に幅広に設定されています。研修内容は、基本研修とコース・分類ごとの専門研修で構成されていますが、埼玉県はこれらをまとめて民間に委託をしているとのこと。東京も同様に、外郭団体に委託しています。一方、神奈川県は、今年度は、子育て支援員研修を実施できていません。今後、どういった設計で研修事業を進めていくのか注視したいと思います。専門研修。専門研修というのであれば、「現場」の視点を活かした真に専門性のある研修を実施してほしいと期待しています。
(*1)小規模保育事業への移行状況
ナーサリールームからの移行26施設 認可外から9施設 新設11施設
(*2)
「ナーサリルーム」:0〜小学校就学前まで 定員30人以上
「家庭保育室」:0〜3歳児 定員6人〜19人
「地域型事業所内保育施設」:0〜小学校就学前まで 企業の従業員と地域の子どもを預かる