中学校完全給食に舵を切った川崎市の取り組みを聴く

 
8月に開催した給食フォーラムに参加された皆さんとの企画で、川崎市南部学校給食センターを見学し健康給食推進室から話を聞きました。2017年9月より稼働している川崎市南部学校給食センターは、川崎市の中学校53校のうち22校分の給食を作り各学校に届けています。川崎市の給食センターは他にも2箇所(中部、北部)あり、自校方式2校、小中合築校方式2校を含めて、3万人の生徒に完全給食が提供されています。

中学校給食実施に向けた経緯を聞くと、議会の決議(中学校完全給食の早期実現を求める決議・2011年)や保護者の要望が後押しとなったことがわかります。また、2013年の川崎市長選挙では三人の候補者が揃って中学校給食の実施を公約に掲げ、その後、2013年11月に中学校給食の基本方針が決定された以降は、アンケートやパブリックコメント、保護者説明会などを実施しながら翌年10月までに中学校完全給食実施方針も決定。2ヶ月後には3つの給食センターの整備に関する方針を公表、昨年12月の中部、北部の給食センター稼働を持って全ての中学校で給食が実施されている。早い早い。政治的決断があれば進みますねー。
3つの給食センター合わせて347億円のPFI事業で、14年(2018〜2031年)にわたり22億円/年の債務負担が発します。また、中学校の給食費も2018年度から月額550円引き上げられ5,400円となっていますが、中学校給食について生徒や保護者の満足度は高いと言います。
南部学校給食センターのオートメーション化されたライン、徹底した衛生管理、アレルギー対応調理室と真新しい施設に見学者から感嘆の声もあがりました。羨ましく思われたのは150食ほど対応できるというアレルギー対応。別室でアレルゲンに配慮して調理、複数の調理員で子どもの名前やアレルゲンを確認しながら配送の準備などの作業を進める体制となっています。
私も保育所運営に関わっていますが、給食業務の中でも細心の注意が求められるアレルギー対応。ハードでできる対策は可能な限りやるべきですが、センター方式でなければここまではできないだろうとも思いました。様々な方式における事故報告の件数などを検証・比較していけば、その優位性は明らかになると思うのですが。
中学校給食の実施にあたって、各学校では、登校時間を5~10分早めたり、朝の時間を5〜10分短縮したりして、給食時間を確保したそうです。学校側の負担感はないのか?という質問にも「給食指導の準備を求められた教員にとっても、食育の観点から考えれば結果的にはプラスになったのではないか」と。同じ給食を食べることで生徒間の会話も増えたというこれまたプラスの評価も聞かれました。
食時間の確保や、中学校での受け入れ・配膳など課題と思われていたことをクリアできた川崎市の取り組みに学ばせてもらいました。横浜での議論に生かしたいと思います。