富士市ユニバーサル就労の推進に関する条例にもとづく取組みに学ぶ

14日、神奈川ネットの就労支援チームで、富士市が取り組むユニバーサル就労について、富士市ユニバーサル就労支援センターを訪ね、富士市生活支援課ならびに支援センターの事業を受託している東海道シグマの三好泰枝さん(統括責任者)からお話をうかがいました。
今年2月、富士市議会で議員提案により「富士市ユニバーサル就労の推進に関する条例」が可決・成立、4月に施行されました。発端は、2014年11月、ユニバーサル就労を拡げる親の会から1万9千人の署名を添えて市に提出された「親も子も安心して暮らせる環境整備」を求める要望でした。その後、議会は議員連盟を立ち上げ、市長サイドもこの動きに加わり、ユニバーサル就労の検討が進められたそうです。条例では、ユニバーサル就労の基本理念や市民、事業者および事業者団体の責務など、この事業の推進に関することが定められています
ユニバーサル就労=支援つき就労で、「1人ひとりのライフスタイルに合わせて1日1時間でも…」というスタンスで、誰もが生きがいを持ち、働くことができる仕組みづくりをめざすとされています。ユニバーサル就労支援センターでは、生活困窮者等就労準備支援事業、就労困難者就労支援事業、協力企業等開拓事業、協力企業支援事業の4つの事業を行います。
就労希望者を受け入れる協力企業は32社。企業開拓も順調に進んでいるようです。支援センターは、業務分解(仕事の切り出し)のサポートも行なっており、業務分解に取り組むことで、人材不足に悩む企業も就労希望者を受け入れることができるなど、就労希望者と起業双方から、ユニバーサル就労に期待が寄せられているとのことです。雇用後も本人や受け入れ企業と丁寧な振り返りを行うなど、利用者と企業も応援する姿勢が伝わってきました。
ユニバーサル就労利用者数は27人。(内訳:就労準備9人、就労体験5人、有償コミューター(*)3人、無償コミューター0人、雇用5人、他機関へつなぐ3人、中止2人)
(*):職場の中で1人分の仕事でなくてもその人の役割を見出し、一般的なボランティアとは区別し「継続的に通う人」という意味で「コミューター」と呼ぶ。
非雇用型の就労に対しては、独自に「コミュニーター確認書」を作成します。業務をしていく上での決め事を確認することで企業と働く人を守り、また、ユニバーサル就労という概念をできるだけ言語化し、共通理解を進めるものでもあると思います。
時間軸も意識しながら仕事を切り出せる業務分解シートや、若者や障害者、高齢者などの既存の相談窓口からつながるユニバーサル就労を希望する人のために、統一的アセスメントシートを作成、活用するなど、センターが中心となり有機的にユニバーサル就労を進める工夫もありました。
「困窮者への就労訓練」を前提に考えると、自立につなげることに縛られてしまう側面も否定できないのですが、「ユニバーサル就労」をめざすことで、多様な働き方を認め、様々な事業を有機的に実施しながら垣根を越えられるのではないかという可能性を感じました。様々な立場の人が条例制定に努力し、その条例がベースとなったユニバーサル就労の推進力を実感させられました。
*富士市のユニバーサル就労の取組は、今年10月、内閣府の地方創生交付金の交付事業に採択されています。

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