2015年介護保険改定と市町村の役割

 9日、県議会の超党派勉強会で「2015年介護保険改定と市町村の役割」というテーマで鏡論さん(淑徳大学教授)のお話を伺いました。
 国は、今後の介護保険制度のあり方として、地域包括ケアシステムの構築や費用負担の公平化を謳い、全国一律の予防給付(訪問介護・通所介護)を市町村が取り組む地域支援事業(新たな総合事業)に移行し多様化するとしています。しかし、その実態は給付の削減をめざすもので、「地域の特性を生かす」と言えば聞こえはいいものの、市町村に丸投げした状況であるということは、既に各方面から指摘されているところです。

 医療との連携についても、自治体への期待が大きいものの一般市町村には医療についての権限がないなど政策推進が難しく危うい制度づくりとなっており、鏡さんからは、介護保険事業計画と医療計画との整合性をはかる必要性も提起されました。また、民間主導となっている住宅政策も課題としてあげられました。
 さらに、特定の階層を対象とし負担増を盛り込むことや、特別養護老人ホームの入所の対象を制限する、あるいは、特殊事情を加味してサービスの順番を決めるということ自体、従来の措置制度に基づく発想で社会保険の意味をも失うのではないかとも指摘されています。
 私は、以前から、介護保険事業に地域支援事業として一般高齢者施策や予防事業を組み込むこと自体に違和感を持ち、「保険」制度の中で齟齬を生じさせていると言い続けてきました。鏡さんも、そんな私の問題意識に「交通事故に遭う前に、事故に遭いそうだからと保険金が支払われるなんてことないですよね?」応じて下さいました。

 「地域支援事業」は、三位一体改革で一般財源化された老人保健事業と介護予防・地域支え合い事業の補助金が再構築され介護保険制度改正の中に盛り込むことで誕生したもので、現在各年度の保険給付費見込み額の3%以内で実施することになっています。 (2006年度2%以内、2007年2.3%以内、2008年3%以内と設定)2〜3%の枠に押し込めるように実施することで事業が抑制・縮小されているのではないかと懸念します。

高齢者食事サービス年間提供数(横浜市)

 横浜市では、2006年度から地域支援事業を実施しています。高齢者の食事サービスも地域支援事業に組み込みサービス対象者を要介護度2以上として実施することとされました。以来、実績は減少し続けています。県内自治体の食事サービス事業の実績をあらためて調査しましたが、高齢者人口が増加する中で配食数は減少し続けていることが確認できました。
 新たな総合支援事業に期待する意見もありますが、地域支援事業にあれもこれもと盛り込んでも総花的にメニューが並ぶだけではないでしょうか。保険制度としての理念を踏まえ、当事者の選択を尊重し利用者本位の制度としてその有り様を考えていかなければならないはずです。国が主導する財政的な帳尻合わせの給付削減の影響を深く考察していく必要がります。

 介護保険改定を目前に、現在、自治体では次期介護保険事業計画(2015年〜3カ年計画)の策定準備が進んでいます。そのプロセスにいかに市民の参加が保障されるのか、自治体の姿勢も問われます。保険者としてのビジョンを示し市民との対話を重ね、地域ニーズを丁寧に汲み取り制度化してこそ地域包括ケアシステムは機能するのだと思います。利用者に向き合い制度を作り上げる大切さを肝に銘じたいと思います。