監察医制度「情報提供・情報公開のあり方」見直しに向けて〜一般質問報告〜

ようやく、県議会本会議において、監察医制度について提案する機会を得ました。これまでも、神奈川ネットの県議を通じ、県議会において、行政解剖を個人化させないシステムの構築や、監察医の委嘱のあり方の見直し、情報公開の義務付けなど 改善提案を続けてきた経過があり、前任の山本裕子県議の質問からもすでに5年が経過しました。また、一般質問の機会が4年に1度しかない私にとっては、やはり、「ようやく」という思いが強いのです。

 私は、昨年末、ご家族を亡くされたAさんから横浜市域における監察医制度について問題提起をいただきました。Aさんのご家族のご遺体は、警察の死因調査の結果、監察医による検案を受けることとなりました。Aさんは、警察官から、ご遺体を葬儀社の車両で搬送しなければならないこと、搬送・検案、解剖の責任および費用については遺族が負担する旨説明を受け、監察医の行う検案や解剖は拒否できないという前提で進められた手続きにのっとり「承諾書」に署名、捺印されました。その結果、検案を終えて、監察医に対して4万円、葬儀社に対して遺体搬送費および検視介添え処置料金として86000円、総額12万6000円の費用を負担されています。

横浜市域において、監察医が行う検案や解剖は政令による行政行為とされていますが、遺族が費用を負担しなければならないという法的根拠はありません。Aさんが求めた「遺族が検案および解剖の費用を負担する」という法的根拠の提示に対しては、警察官は「法的根拠はありません」とお答えし、より丁寧な説明を行った上で負担のお願いをするしかなかったと思います。「神奈川県監察医の業務に係る費用に関する基準」 には、死体検案費用(基準額1万円)や解剖費用(基準額5万円)が定められていますが、遺族にはこの基準額も知らされません。これらは、本来、解剖に関する遺族の承諾書を作成する際に説明されるべきと考えます。

「監察医が提出する報告書及び記録に関する基準」では、知事が委嘱している監察医が検案や解剖を行った内容を県に対して所定の報告書等により提出することを定めていますが、その報告は一部に限られ、監察医が全ての情報を保管している状況です。そのため、監察医から県に提出されていない記録等について、遺族らが県に対し公開請求をしても、原則的には開示の対象とされません。

まずは、監察医が行う検案や解剖の費用について、例えばその内訳を示すようにするなど透明性を確保すべきであり、加えて、「監察医が提出する報告書及び記録に関する基準」を見直し、監察医が保管する全ての記録の提出を求め、遺族から開示請求があった場合に情報提供に務めるべきです。

保健福祉局長からは、透明性を確保するために、監察医に対して費用の内訳を明確にした領収書の発行を義務付けるなど「神奈川県監察医の業務に係る費用に関する基準」の見直しを検討するとの答弁がありました。

また、検案や解剖の情報の取り扱いを定めた「神奈川県監察医が提出する報告書及び記録に関する基準」について、現状では、県が必要と認めた場合、監察医に対して記録の提供を求めることができることになっていますが、これを、遺族から県に対して情報提供の依頼があれば、犯罪に関係する場合を除いて、県から監察医に対して記録の提供を求め、それを遺族の方にお渡しできるよう見直しを検討するとのことでした。さらに、検討にあたっては、警察本部や神奈川県監察医委員会の意見を聴きながら、進めていくとのことです。

  死因究明二法が成立したことを受け、本県においても監察医制度の抜本的見直しを検討するとされていますが、新法に基づく解剖数は1000体にも満たないようです。新法が施行された後の経過を見守る必要もありそうです。また、何よりも、現に在る監察医制度の課題から目を背ける事なく、改善に務めて頂きたいと思います。実は,私は、2月の常任委員会でも神奈川県監察医委員会で情報公開のあり方を検討してほしいという意見を述べましたが、今春開催された委員会では、医療課から「情報公開については要綱に定められている」と報告され、何ら検討はなされませんでした。今後も委員会の議論を注視したいと思います。