外郭団体に対する見えない補助金は「見える化」すべき

常任委員会報告

「万葉荘」は昭和38年、中小企業従業員と家族の福利厚生施設として、県が整備し、これまで、県が100%出資する外郭団体(公益財団法人)神奈川産業振興センターが運営してきました。しかし、利用者数の減少により経営状況が悪化、経営改善に務めたものの、改善が見込まれず、今年度限りで運営を終了し、土地・建物を県に返却することが報告されました。

万葉荘の運営は、産業振興センターにとっては「収益事業」と位置づけられており、県も財政的な支援は行っていないとされていました。しかし、常任委員会において、賃借料、および貸付料の収納状況について確認したところ、万葉荘の土地、建物の貸付けにあたっては、貸付料の減免措置を実施していることがわかりました。正規貸付料は約3000万円ですが、24年度現在、940万円余で貸し付けています。約2100万円の減免額が、まさに見えない補助金となっています。
担当課によると、減免の要件は、「普通財産及び物品の交換、出資、無償譲渡、無償貸付け等に関する条例」の第5条1項(国、他の地方公共団体その他の公共団体又は公共的団体において公用、公共用又は公益の用に供するとき。)に該当するとのことです。しかし、昨年度の中小企業従業員などの利用者は359人で、利用率は全体の1.85%にとどまっているなど、本来の事業目的にかなった事業ともなっていません。

私は、本来、庁内の決裁によって行われる減免措置ではなく、補助金として予算に計上することが望ましいと思います。そのことにより、万葉荘の運営において、県がどのくらい財政的に関与しているのかが明らかになりますし、その支援の必要性及び妥当性も検証されることになります。

さらに、中小企業センタービル(土地は県が所有し、建物は産業振興センターと県が区分所有している)の県所有の部分についても、県が産業振興センターに貸付けを行っており、貸付け状況を確認したところ、4〜6階を除いた部分については、貸付料の減免を行っているとの答弁がありました。ここでも、約2200万円余の正規貸付料を938万円余と正規貸付料の1/2にも満たない金額で貸付けています。これも見えない補助金と言えるのではないでしょうか。さらに、ビルの4〜6階部分(土地272.13㎡、建物2628.579㎡)についても無償貸付けを行っていますが,正規貸付料が試算されていないとのことです。まずは、自らが出資する外郭団体への財政的な関与の実態は把握いただきたいところです。

産業振興センターは、公益法人として自主財源事業の効率化による財政基盤の強化を求められ、また法人としても経営改善計画における課題と認識されていたところであり、また、「緊急財政対策本部調査会」が設置され、さまざまな検証、検討がおこなわれている情勢もかんがみ、産業振興センターへの土地、建物の貸付けにあたっても、改めて減免措置の必要性及び妥当性の検証・検討を行うべきとの意見を述べました。