県議会第一回定例会 予算賛成討論

23日、県議会本会議にて、2012年度一般会計予算案を初めとする、その他諸議案について、以下討論をしました。
 
東日本大震災の発生から一年が経過しましたが、この間、あらゆる場面で「絆」という言葉、そして、共に暮らし・支え合う社会へのビジョンが語られてきました。
国においては、東日本大震災からの復旧・復興や、これまでの医療、介護、年金など世代間に偏りがあった社会保障制度を、若者の就労支援や子育て支援にも振り向け、大きく転換することを謳い、「社会保障と税の一体改革」の議論も始まっています。しかし、消費税増税関連法案をめぐる攻防がクローズアップされる中、一体改革のもう一方の側「社会保障」の将来像は見えて来ません。

持続可能な社会保障制度をめざすためには、若者の経済的自立に向けた取組みが必要である事は言うまでもありませんが、現状は、正規・非正規を問わず、不安定な働き方を強いられ、また、働きたくても働けない、社会に居場所すらない支援を必要とする若者たちが増え続けています。こういった若者の課題に目を向けた継続的な伴走型の支援が望まれます。

2012年度には、「かながわ若者就職支援センター」の就職支援に加え、県内で5カ所目の若者サポートステーションとなる「かながわ若者サポートステーション事業」および「子ども・若者相談事業」がスタートします。
県内には、4カ所の若者サポートステーションを始めとし、中間的な就労の場を提供する協同組合やNPOの活動を始め、福祉、教育など支援リソースもあります。本年度は、本県も参加する「横浜・神奈川若者支援連絡会議」において、県内自治体、民間組織とともに、若者サポートステーションの課題や広域連携の必要性について議論を重ね、共同宣言の策定にこぎつけたと聞いています。
この取組みを生かし、雇用、福祉、教育など、青少年行政にかかわる総合的な視点から、県内自治体及び民間組織との広域連携によるこども・若者支援の取組みが推進されるよう神奈川県のリーダーシップに期待します。

次にエネルギー政策について申し上げます。
4月からは、東京電力管内で大口電力需要者に対して17%の値上げが求められており、本県としては東京電力に対して値上げの再考を求めています。
そもそも、日本の発電所は夏と冬のピーク時の電力をまかなうために、過剰な設備投資が行われ、設備稼働率が下がり、結果として高い電力料金となっています。電力料金を構造的に下げるためにも、自治体・産業界が省エネルギー・省電力型社会へ移行する取組みは重要です。特に、業務部門の電力ピーク時の電力構造は、照明が3割、空調が4割を占めており、この節電が急務です。省エネ事業として、ピークカットを意識したデマンドコントロールシステムの導入助成事業など注目すべき取組みもありますが、かながわスマートエネルギー構想にかかる事業予算のうち、省エネ関連予算は1割に留まっています。

かながわソーラープロジェクト研究会最終報告においては、「再生可能エネルギー固定価格買い取り法」の施行も視野に入れ、太陽光発電設備について、補助金に頼らない自立的な普及・拡大を図る必要性が指摘されています。現時点においていも、太陽光発電設備への補助よりも、むしろ、照明・空調をはじめとする節電対策を自治体主導で進め、産業界・家庭へ波及させるほうが、低コストで二酸化炭素をも削減ができます。エネルギー需給の安定化、海外への一次エネルギー買い付けコストを下げることにもつながり、自治体施策としては、政策効果が高いのではないでしょうか。
再生可能エネルギー中心の社会に向かうためにも、節電に経済的な価値を与えるネガワットの発想を持って、イニシャルコストを押さえた高効率照明の導入など、省エネルギー・省電力型社会を作る一層の取組みに期待します。

次に、教育局関係予算について申し上げます。
特別支援教育の充実に向けて、特別支援学校の計画的な整備やスクールバスの増車など、支援を必要とする子ども達がよりよい環境で学べるよう、一人ひとりのニーズに合わせた教育の充実を目指し対応が図られていることは評価いたします。しかし、特別支援学校の特に高等部において、過大規模化という課題を抱える本県としては、特別支援学校の整備や分教室の現在の対応にとどまらず、高等学校に特別支援級を設置するための仕組みを整えていく必要があります。学校教育法では、設置が認められていながら支援級について教員の配置などの規定がないため設置できない矛盾を解決しない限り過大規模化は解消されません。改善を図るよう国に強く投げかけていくべきと考えます。
また、今予算では、支援を必要としている子ども達に福祉の視点から支援する仕組みが拡充されました。教育相談コーデイネーターやスクールカウンセラーや支援チームによる支援など支援の環境が整いつつあります。スクールソーシャルワーカーの活用は生活環境にも踏み込める点で期待しますが、活用の場を充分確保できるよう、各自治体に教育現場との連携が整えられるよう配慮していただきたいと考えます。

その他、2012年度予算案では、厳しい財政状況にありながらも、東日本大震災の教訓を踏まえ、「減災」の考え方を基本とした地震防災対策や、将来社会を見据え、新しい公共支援事業など市町村や市民活動の営みから新たなしくみづくりに取組む方向性も示されていますが、これらの取組みについても一定の評価をするものであります。

また、今後は、緊急財政対策本部、および諮問機関の神奈川臨調において、スピード感を持ってダイナミックに行財政改革に取組むとされていますが、本県が実施する全ての事務・事業は県民生活に繋がるもので、自治体の行財政運営のあり方とともに、県民への説明責任が求められます。
これまでも、様々な財政指標により説明責任に努力がなされてきましたが、財政の持続可能性の評価、及び、個別事業の分析とその成果を明らかにする財務マネジメントの強化と、アカウンタビリティの充実に向け不断の見直しを行い、一層の公会計の透明化に向けた取組みも推進いただきたいことを申し上げ、本定例会に提案された諸議案に対し、あらためて賛成を表明し討論を終わります。