「市民自治体」を考えるセッション報告
9日、市民がつくる政策調査会が開催した市民自治講座の「市民自治体」という概念をめぐるセッションに参加しました。少し長くなりますが報告レポートです。
私は、「個性化よりも平準化」が優先されがちな大規模自治体の課題や、現場とつながり市民政治のフィールドをひろげる活動の重要性についてお話させていただきました。2001年にスタートした市民社会チャレンジ基金の取組みについても報告。チャレンジ基金の審査員でもあり、市民自治体という概念を提起された須田春海さんの「グローカリズムの視点を持って個人の形成と社会の連帯を生み出す実験を地域社会のなかで積み重ねることが新しい社会の思想を作っていく」というメッセージと、同じく審査員で昨年7月に逝去された北沢陽子さんの「審査のプロセスにも学びがあった」といった市民社会への期待のメッセージもあらためて伝えさせていただきました。
市民がつくる政策調査会代表理事の坪郷實さんからは、ドイツの自治体制度や選挙制度についてうかがいました。ドイツでも高齢化や人口減少、財政危機、政治不信といった課題を前にして、政策テーマ別の市民フォーラムが開催されたり、市民投票制度が導入されたりと、さまざまな参加型マンージメントが試みられています。政策の横断的調整の必要性も認識されており一定の成果も報告されました。しかし、市民が副次的な決定にしか参加できない、自治体事務事業を補完しているに過ぎないという批判もあるとのこと。自治体選挙の投票率はこの16年間で71%から49%に低下しているそうで、隣の芝生も青くなかったようです。
続いて、人口増加率県内トップ、市民一人当り行政コスト全国最少等で注目される千葉県流山市の井崎義治市長から、人口減少時代に定住人口を増やす取組みとして子育て支援や住環境の維持・創出に向けた取組みと成果についてうかがいました。「人・モノ・お金が集る街へ」を目標にした交流人口を増やす取組みも着実に成果が出ているようです。市民アンケート(2015年)では「市に意見を言える機会に満足」という人がこの10年間で60,2%から70,0%へ、「流山市の行政を信頼する」という人が49,6%から75,5%にアップしています。「市民の知恵と力を活かす市政」を掲げた井崎市長が就任以来、自治基本条例に始まり市民参加条例、街づくり条例を制定し、市民と行政、議会の関係を作り変えてきたことへの評価は高いようです。さらに市民投票条例の制定に向けても検討が進められています。
小平市の都市計画道路をめぐる住民投票運動のリーダー水口和恵さんからは、1960年代から続く都市計画道路「小平3・2・8号府中所沢線」の建設をめぐる住民運動について報告がありました。2013年3月には、直接請求により住民投票条例が可決、5月には建設計画を「住民参加で見直す」必要の有無を問う住民投票が実施されましたが投票率35,71%で「不成立」。(同年4月の市長選後「投票率50%」を成立要件とする条例改正が行われていたのですがこの市長選の投票率は37%だっだそう。)水口さんたちは開票されなかった投票用紙の開示を求めて訴訟を提起したものの最高裁で「上告棄却決定 」という結果でした。しかし、知る権利や民主主義を問う運動は注目を集め、さまざまな考察が続いています。
議会を通じた間接民主主義に加え、シングルイシューで市民の意思を問い、その意思を行政に直接反映させていく手法として住民投票制度をいかに機能させていくかということは、今後さらに議論されなければならないし、その前提として市民の知る権利を保障すること、市民同士が討議していくことも重要であるこということをリアリティのある報告に学ばせていただきました。
私も、リアリティのある運動として、ワーカーズ・コレクティブの一員としてのまちづくりに参加することや、生活と政治を近づけるローカルパーティの活動に意義を感じ活動してきました。このセッションを通じて、現場から始まる政策モデルづくりへの可能性も再確認できました。頑張ろう。