一時預かりの実施状況に関する調査報告書を読んでみた

先頃、「一時預かり事業の実施状況に関する調査」(三菱UFJリサーチ&コンサルティン)の報告書が公開されました。

一時預かり(保育)を実施しているピッピ親子サポートネットの4事業所(ピッピ保育園、ピッピみんなの保育、りとるピッピ、ここ・はっぴぃ)もヒアリング調査に協力し、事例として紹介いただいています。

この調査は、厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業として実施されたもので、全国の959自体へのアンケート調査と、一時保育を実施する10事業へのヒアリングが行われています。一時預かりが地域全体で子育て家庭を支えていく際に大きな役割を果たすことが期待されているとした上で、一時預かりの利用ニーズや運営上の課題等を明らかにし、課題解消のための工夫・取り組み事例をピックアップし、国や自治体へに求める支援策を提言するという内容で、「そうそう!」「やっぱりね」で一気に読めます。
・定期利用では就労が中心となっているため、保護者のリフレッシュやレスパイト等で定期的な利用を希望していても、利用要件に設定がない、空きがないなどで、十分利用できていないことも考えられる(報告書104ページ)
・共働きの家庭のみならず育児についての負担感・不安感や、悩みを抱える保護者の利用が増えている 。(報告書106ページ)
というあたりは、自明の理ではありますが、
・「利用者が多くなるほど、個別の支援や配慮が必要な子どもの預かりも増えていることがうかがえる。」(報告書109ページ)
と踏み込んでもらえたのは嬉しい。

課題として上位に挙げられていた、「定員以上の申込みがあり、断らざるをえない」(26.9%)、「歳児等の低年齢児の預かりが増え、定員分預かることが難しい」(26.1%)、「配慮を要する子どもの預かりが増え、定員分預かることが難しい」(19.9%)といった記述にも、「ウンウン、そうだよね」の連続。(報告書123ページ)
その上で、「個別の配慮が必要な子どもや低年齢児を預かる際に、職員を手厚く配置したりするなどで、預かることができる人数が定員より少なくなっているケースがあることがわかる」とあります。

これ、当たり前では?と思われると思いますが、この当たり前がなかなかうまく伝わらなかった。横浜市乳幼児一時預かりは、一時預かり事業を「稼働率」で評価する仕組みだったので、困難ケースや0歳児を受け入れると保育士の加配も必要になるし、定員より少ない受け入れになりがちで、結果的に稼働率が下がり補助金収入が減ってしまう。しかも、近年は、そもそもの預かり時間(ニーズ)が短かくなる傾向もある。なので、私たちは、一時預かりの特性を考慮して変動性の補助体系を見直すようにと、繰り返し訴えてきたのでした。
もちろん、横浜市との対話の窓口は開かれていて、保育所での一時保育や乳幼児一時預かりを実施する団体がネットワークして長年にわたって意見交換を続けてきました。事業所を増やすための補助体系や参入要件見直しや、定員の見直し、障害児加算や利用減免制度の導入など、制度改善を重ねてきた経緯があります。横浜市ではいち早く小規模保育に乳幼児一時預かりが併設できたりもしました。

一方で、この調査では、国や自治体に求める支援として、「一時預かり事業の実態把握や意義についての市区町村の理解促進」があげられ、『アンケートの結果をみると、近年一時預かり事業の利用が増えている家庭について「わからない、把握していない」との回答は4割弱、同じく近年個別の支援や配慮の必要性が増している子どもや家庭についても、「わからない、把握していない」との回答が半数弱みられた。』という指摘も。(報告書46~17ページ)自治体の理解・協力については、まだまだ温度差があるのだなあとつくづく実感するデータでした。

横浜市では、今年度から一時預かり事業における0歳児ニーズへの対応として、0歳児受け入れ加算制度も実現。一時預かりを初めて利用される方たちに向けての無料券の配布も始まります。現場として、どの程度ニーズに対応できるのか、若干不安もありますが、利用人数と利用時間により変動していた補助金を規模にあわせ固定制に見直すこともできて、運営はかなり改善できるのではないかという見通しを持っています。現場で出会うたくさんの「困った」を乗り越えるためにも、多様な価値と可能性を持っている一時預かりが広がるように、もう少し、いや、まだまだ頑張ってみようと思ってます。