検証を礎に〜クルーズ船での集団感染から学ぶ〜

2020年2月3日、3,711人(57カ国、乗客2,645人、乗員1,066人)を乗せたダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に入港、このクルーズ船で乗員乗客の2割に当たる712人が新型コロナウイルス感染症に感染し、13人が死亡するというクラスターが発生、その衝撃的な映像は国内外に発信されました。
あれから1年を経て、先日、地元メディアの神奈川新聞に、10回にわたり、ダイアモンド・プリンセス号での集団感染についての検証記事が連載されました。厚労省や神奈川県、横浜市、また医療機関や乗船者への取材をもとにした記事は、初回の「未知の感染症で暗転」から始まり、ラストとなった第10回は「想定外・検証を礎に」と結ばれています。
3月27日には、「警鐘クルーズ船集団感染1年」報道から学ぶ」 と題したオンライシンポジウム(主催:(一社)勁草塾、協賛:横浜自治研センター、生活クラブ運動グループ横浜未来アクション)が開催され、連載記事を執筆された記者のお一人神奈川新聞の清水嘉寛さんの報告をお聴きする機会を得ました。

 

前代未聞の搬送調整と責任の所在
国際ルールの不備、さらには検疫法か感染症法か、その解釈も曖昧だった中で、災害医療の原則で、神奈川県の判断でDMATが派遣され前例のない対応が進められました。病院に搬送され769人のうち203人は神奈川県内、566人が15の県外に搬送されたと言います。
こうした対応をめぐって、「横浜市が、やるべき」、いや、「やれる範囲を超えている」、「担いきれない」などなど、国・県・市とそれぞれの事情、言い分があったことは周知の事実です。
また、検証記事でも触れられていますが、ダイアモンド・プリンセスが寄港する以前、昨年1月20日には、横浜港で大型クルーズ船の感染症対策訓練も実施されていたのですが、その教訓が実際の現場で生かされなかったことも悔やまれます。

「検証」=未来への備え
2020年4月には、長崎市に停泊していたクルーズ船内でも新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生していますが、この事案については、昨年10月には、国・県・市・長崎大学・DMAT・自衛隊・医療機関・事業者などが連携して検証報告を行なっています。
また、既に、「新型コロナ対応・民間臨時調査会」(以下コロナ民間臨調)の報告書も発行されています。ここでも、ダイアモンドプリンセス号の一件について、リスクコミュニケーションをポイントにした検証が行われています。

清水さんも、独自に調査を続けている乗客の方々の「災害の実体験を無駄にしてはいけない」という想いにも触れ、あらためて検証を行って、改善につなぐ対策が必要であることを強調されました。
教訓を実際の現場で生かすためにも、検証を行い政策化していくプロセスこそが未来への備えであることを再確認しました。