院内集会「介護保険実施20年ー介護保険制度の崩壊ストップ!緊急アクション」

介護保険制度の見直しをめぐる議論が大詰めを迎えています。
10月28日には、『介護保険実施20年ー介護保険制度の崩壊ストップ!緊急アクション』題した院内集会が開かれ、厚生労働省経と財務省に要望書を提出しました。

要望項目
1.要介護1・2の 「 訪問介護の生活援助」と 「 通所介護 」 を地域支援事業に移行せず、 介護保険給付で行なうこと
2.ケアプラン作成は有料化をせず、 全額保険給付で継続すること

*地域支援事業は、「予防」事業ですが、本来介護認定を受け、介護給付の対象となる人も対象になっています。市町村
の責任で実施する互助を基本とするサービスで、「多様な担い手」によって提供されるとされていました。すでに先行して介護給付から外され地域支援事業に移行された要支援1、2の方たちの受け皿になるはずでした。

財務省(財政制度分科会)の見解
財務省(財政制度分科会)は、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」の原則の徹底を掲げ、要介護1・2の生活援助サービス等の地域支援事業に移行することや、利用者負担を見直す必要性を提言しています。また、ケアプランの有料化についても「利用者自身がケアプランに関心を持つ仕組みとした方が、サービスの質の向上につながると考える。利用者負担を導入すべき」としています。

院内集会で示された厚生労働省の見解
要介護1・2の 「 訪問介護の生活援助」と 「 通所介護 」 を地域支援事業に移行することについて、厚生労働省は、「多様なサービスを実施している市町村の数は訪問6割、通所でも6割ちょっとにとどまっている。」「実施主体は、介護サービスの事業所に頼っている。民間主体の参入がなかなかない。」と言った課題をあげ、「現時点で方針が決まっているわけではない。」という見解を示しました。ケアプランの有料化についても、財務省や政府の姿勢(骨太の方針2018)を紹介しつつ、厚労省の審議会で議論中であり慎重に検討したいとされました。

高齢者の暮らしを支える現場の声、当事者の声を聴く
訪問ヘルパー、通所介護ワーカー、ケアマネジャーから、認知症や難病を抱えた方など「要介護1・2」の利用者状況が語られました。また、支える家族が単身で日中の見守りが困難となる事例が増加していることや、介護離職や遠距離介護の課題も報告されました。また、要介護1で難病を抱えたKさんからは、(78歳)から、生活援助は生きるために必要なサービスであると訴えがありました。

ケアマネジメントの有料化で何が起こるか?
相談の入り口を狭めたり、利用の抑制につながることを危惧します。
ケアマネジャーの仕事は相談援助業務です。介護を必要とする誰もが平等に相談でき必要なサービスが受けられるべきです。ケアマネジメントの有料化がケアマネジャーの質の向上につながるとは思えません。

この点について、厚労省は以下のように回答をしました。
回答)質の向上を図られることということで、財務省の有識者会議財政制度審議会財政制度分科会で議論されている。(R元年10月9日開催)「利用者自身がケアプランに関心を持つ仕組みとした方が、サービスの質の向上につながると考える。利用者負担を導入すべき」とあった。厚生労働省としては、制度の見直しに関しては、3年に一度行っている。ずっとこの間議論されていた。第8期計画期間に向けて、2月から社会保障審議会介護保険部会にて、制度の見直し議論が開始されている。政府の骨太の方針2018においても「介護のケアプランの作成について給付のあり方を検討する」と記述されており、また昨年12月に取りまとめられた新経済財政再生計画改革、行程表2018においても介護のケアプラン作成に関する給付と負担のあり方について、関係審議会等において第8期計画間に向けて検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずるとされている。こうした記載も踏まえ、ケアプランのあり方に関して、社会保障審議会介護保険部会において、検討する。部会本日も午前中に開催されている。事前賛成反対の立場からいろんな意見がある。今回は反対のご意見として伺い、参考にして慎重に検討したい。

この回答をどう読み解くか
つまりは、「財務省の審議会や政府の骨太方針にそって検討してます。いろんな意見があるけれど、厚労相としては、明確な根拠を示すことが難しいと」ということであろうかと思います

生活援助と身体介護は切り離せない
生活援助は単なる代行的な家事援助ではありません。しかし、訪問サービスのうち「身体介護」を除く「生活援助」だけが給付抑制のターゲットにされています。生活援助と身体介護は切り離せない一連の専門性のあるケア。これを「自立支援」として一本化すべきです。

ちなみに厚生労働省の回答は
回答)報酬の設定については、それぞれ能力や掛かる時間を勘案して決めている。
仮に、生活援助と身体介護を、一体的にするとなると、身体介護を中心に利用されている方は、負担が軽くなるかもしれないが、生活援助を中心に利用されている方は、負担が重くなると想定される。両方使う単位も設定しているため、現状では一体化させるという検討は行なっていない。

残念ながら論点がすり替わっています。今後も提案を続けなければなりません。
(*身体介護 とは、食事や入浴、排泄、着替えなどの介護であり、身体に直接触れて行う介護。生活援助とは「身体介護以外の訪問介護であって、掃除、洗濯、調理などの日常生活の援助。そのために必要な一連の行為を含む)

介護保険制度はあくまでも「保険」
介護保険法では、尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、要介護状態の人に、必要な保険給付を行うものとすることが定められています。であれば「予防」の名の下に、介護保険財源を使って要介護状態ではない方たちの事業を推進することは制度に趣旨にそぐわないと考えます。すでに始まっている地域支援事業は、要介護状態の方もそうでない方も利用できるとされていますが、介護保険の財源を使いながら実施しているにも関わらず、要介護状態の利用者がいないという事例も多数見られます。貴重な介護保険財源の使い方としては問題です。さらに、要介護1、2の方たち給付を地域支援事業に移行することは、制度の根幹に関わる改定となります。あらためて社会保険としての制度のあり方を提言していきます。

2万2,471筆の署名を提出しました。