幼児教育・保育の無償化

保育士が働き続けられる環境整備を
9日、子ども・子育て支援法改正案が、衆院本会議で賛成多数で可決されました。改正法案の柱は、3〜5歳児の幼児教育・保育を無償化するというものです。私は、子どもや子育て家庭を支援する方向性自体は否定しません。でも、政策の優先順位や政策効果を考えると、もろ手を挙げて賛成できないのです。

まずは保育士の処遇改善を進めたい
2018年4月時点の待機児童は約2万人。保育所整備と合わせて「保育士の確保」に最優先で取り組まなければなりません。保育士不足の背景には、賃金の低さや「休みが取りづらい」など労働環境の厳しさがあります。保育士が経験を積みスキルアップし、保育の質を高めていくためにも処遇改善に本気で取り組むべきです。

出典「平成30年度 保育士実態調査結果」(東京都)

 

多様なインフラが求められている
私たちが運営している保育園でも「子育てしながら働きたい」というスタッフの声を捉えています。子どもが小さいうちは「一時保育」のスタッフやパーセントワーカーとして働き、子どもの成長にしたがって働く時間を増やすことで、子育て期も資格を生かして働くという選択が可能となっています。
働く側=保育士の側からも、多様な働き方を支える一時保育の必要性が見えています。加えて、病児保育や産前産後ケアのニーズにも応えたい。それらが虐待の予防支援にも繋がります。今後は保育ソーシャル・ワークという分野への取り組みも進めたい!

自治体の取り組みが生かされる制度づくりが必要
教育・保育の無償化に必要とされる予算は年間総額7764億円で、予算の半分は年収640万円超の世帯にあてられると試算されています。(所得の少ない世帯にはすでに保育料等の減免制度があり無償化されています)
無償化に伴って、自治体にも財政負担が生じます。唐突に打ち出された無償化ですから、知事会、市町村町長会の反発が出たのも当然の事。幼児教育・保育の無償化を受けて、保育所整備の推進など自治体の子ども・子育て支援事業計画の見直しも必要になってくるのではないでしょうか。

2015年、子ども・子育て支援法を含む子ども・子育て関連3法の成立を受けスタートした「子ども・子育て支援新制度」には、「区市町村が主体となり、地域のニーズに基づいた子育て支援の事業計画をつくり、計画に従って保育施設や地域の子育て支援事業などの提供体制を整えていく」ことが謳われています。私も新制度に期待し、NPOの仲間や子育て中の皆さんと、多様な保育・子育て支援策や、学齢期、若者の就労まで見据えた計画の必要性を訴えてきました。
なので、
やっぱり総選挙前に突然打ち上げられた無償化議論の違和感はなかなか拭えません。
創意工夫を重ねる自治体の取り組みが生かされる制度づくりこそが必要。ボトムアップの政治が求められています。声をあげていこう。