生活支援としての移動サービスを提供「杉並区移動サービス情報センターもび~る」
2007年10月に、杉並区が開設した「杉並区移動サービス情報センター もび~る」を視察、センター長の秋山糸織さん、代表の樋口蓉子さんから、もび~るの設立経緯や今後の事業展開など伺いました。
70年代に障害者運動として始まった移動サービスは、福祉有償運送、福祉ハイヤー、福祉事業限定タクシー、介護保険事業者によるタクシー、一般タクシーなど多様な形態の担い手と仕組みで供給されてきました。そのため、利用方法や料金も異なり、利用者にとっては選択が困難であるという課題もあり、情報を整理し提供、相談を受ける機能が必要とされていたそうです。
杉並区では、区の基本計画(2001~)に基づく実施計画(2008~2010)に「移送サービスの支援」として、センター運営や福祉有償運送団体の支援が位置付けられました。また、保健福祉計画においても、高齢者・障がい者の日常生活を支える施策として福祉交通システムが挙げられ、「センター」として結実したとのことです。プロポーザルにより*12つのNPOが事業を受託しています。(*1: NPO法人お出かけサービス杉並、NPO保人移動サービスひらけごま)
もび〜るは、相談窓口として必要な外出サービスを案内したり、取り次ぎ(車両予約)を行っていますが、配車センターの機能に留まらず、移動を切り口にした幅広い「生活支援サービス」をコーディネートすることをめざしてきたそうです。地域包括支援センターや、ケアマネ、福祉事務所等とも連携し、事業の実施やトラブルの解決を通じて生活にとって重要なニーズを掘り起こしてきたとのお話を伺いました。おでかけガイドも作成し地域のお祭りなど外部イベントへ参加されアピールされたり、お出かけツアーやセミナーなどの企画も積極的に行われています。その結果、設立当時29団体であった協力団体も現在76団体となるなど事業の広がりが伺えます。
高齢化の進行にともなって、移動サービスへの需要はますます高まることが予想されます。介護保険事業の見直しにおいても、地域包括ケアサービスの施策の一つとして、移動支援の必要性が議論されているところです。もび~るのような生活支援に着目した現場から構想する「包括ケア」の議論であればリアリティがあります。
横浜市でも、障害児・者のための移動に関する相談窓口として市内9カ所の移動情報センターが開設されるなど、移動支援施策の見直しが進められてきました。こういった取組みも、より包括的な支援につながるよう、市の取組みも検証しながら、政策提案に取組みたいと思います。