「生活困窮者自立支援制度」と豊中市の取組み

 10日、自治体として独自の視点で雇用・就労施策に取組んできた豊中市を訪問し、市民協働部理事の西岡正次さんから、労働市場とつながる地域就労支援事業や、その延長線上にある「くらし再建パーソナルサポート事業」の取組みについて伺いました。

 「地域就労支援事業」は、90年代後半、雇用・労働情勢が悪化する中、大阪府主導で府内市町村で展開された地域に密着した雇用施策です。相談者の増加や困難ケースの増加にともない、就労訓練、実習等の受け入れ先や求人開拓の必要性に迫られ、また、ハローワーク等を中心とした需給調整機構で対応することの限界も踏まえて、豊中市は、2008年11月から無料職業紹介事業にも乗り出します。以後、相談件数、相談者数、就職件数はいずれも1.6~2倍ほど増加し、仕事に着いた後の定着支援により離職のリスクも減少しています。現在、商工会議所などと協力し、企業内ジョブコーチの養成も行っており、経営者に対して、メンタルヘルスサポートやワークライフバランスなど労務人事の改善につながるプログラムとして受講を呼びかけているそうです。
 このように、無料職業紹介事業は、就労の選択肢を増やし地域就労支援のマッチング効果を高めるとともに、中小企業にとっても、人材確保や雇用の質、生産性の向上に資するとりくみであり「企業の応援団」であるという評価に繋がっています。

 豊中市では、「緊急雇用創出基金事業」や「ふるさと雇用再生基金事業」も積極的に活用しており、2013年度は緊急雇用創出基金を活用した34事業が展開されています。こういった基金を活用する際に、高齢者や女性、障害者といった労働者の類型により、それぞれの所管課が対応するという自治体が多い中で、豊中市はこの全てを市民協働部雇用労働課が所管します。同時に、2011年からは、「福祉から就労へ」という流れの中で、福祉事務所との連携を強め、生活保護受給者などの就労支援やパーソナルサポート事業を通じ、専門家によるチーム支援体制も整い、「ソーシャル・ワーク」と表現されるように就労支援の領域は広がりました。

 2015年4月に施行する生活困窮者自立支援制度のモデル事業が、 全国68自治体で始まっています。新制度は、生活保護に至る前の自立支援策を強化することをめざすもので、モデル事業も就労支援を柱とした事業で構成されており、あらためて、自治体独自の雇用・就労対策を示していくことが求められています。
神奈川県内では、県、横浜、川崎、相模原の4自治体でモデル事業が実施されていますが、今後も検証を進め、地域固有のニーズに応える取組みとなるよう提案していきます。