「リニア中央新幹線と電力問題」社会的要請にもとづく検討・調査を!

県議会討論より

14日、本会議で以下の討論をおこないました

補正予算案の提案にあたって、知事は、まず、東日本大震災の発生に伴う社会環境の変化や、県民生活を取り巻く喫緊の課題などを踏まえ、「いのち輝くマグネット神奈川」の実現に向けた施策をスタートさせるための予算として、その位置づけを話されました。
もとより、知事は、いのち輝くために、喫緊に求められている最も大事なことは「福島第一原子力発電所の事故で失われた電力供給を早急に補うこと、そして原子力発電に過度に依存し過ぎないエネルギーの体系を早急に作ること」であるとも表明されてきました。
本定例会において、エネルギー対策予算とともに、新たな中長期的なエネルギー政策として「創エネ」「省エネ」「蓄エネ」を総合的に推進する「かながわスマートエネルギー構想」が提示されたわけですが、まずもって、知事の地域エネルギーの創出に向けた取組み、その基本姿勢に異論は有りません。

しかしながら、知事の掲げた選挙公約を巡ってさまざま議論があり、「4年間で200万戸分のソーラーパネルを設置すると」という点については、電力不足を突破するためのメッセージであったとの知事のご見解も伺い、あらためて、知事の公約は、マニフェストのような性格のものではなく、スローガン的な要素が強いものであったと受け止めております。スローガン政策にマグネット力のある200万戸という数字が盛り込まれていたことが、知事の言われる「誤解」を生み出したとすれば、今後の議論、すなわち、「スマートエネルギー構想」の数値目標達成のための実施期限、工程、財源などを明確にした政策推進のための取組みにむけた議論において、ぜひ、県民に対して丁寧な説明を行っていただきたいと思います。

さて、今年の夏は、福島第一原子力発電所の事故で失われた電力供給を早急に補うことことが困難とされ、神奈川県においても、県民、事業者、行政が一体となって使用電力の抑制等に取り組みましたが、国民に節電の協力要請が行われているその最中、5月27日国土交通省は、JR東海に対し、中央新幹線建設の指示を出しました。国交省の指示を受け、リニア中央新幹線の中間駅を相模原市内に設置するというJR東海の意向も正式に表明されました。

5月12日には、中央新幹線小委員会の最終答申案に関するパブリックコメントの結果が公表されていますが、「中央新幹線整備に反対、計画を中止又は再検討すべき」との回答が73%を占めるという状況でもありました。パブリックコメントには、「震災の影響が収まっておらず、新たに大規模事業を進めるような社会的状況でない」「整備の費用やエネルギー、人的資源を、被災地復興に当てるべき」「原発事故が収束しておらず、今後の電力供給が不透明」といった意見が並んでいます。中央新幹線について震災前の2月に実施されたパブリックコメントで「整備に反対、計画を中止又は再検討すべき」が32%であったことからすると、民意に大きな変化が生じていることは明らかです。

また、リニア中央新幹線は、東海道新幹線の3 倍以上、原発数基分とも言われる多大な電力を必要としますが、総瞬時ピーク電力を含めたエネルギーの供給見通しは明らかにされず、依然として不確実な要素が存在しています。
県がこれまで、リニア中央新幹線の建設促進と県内駅誘致を施策として掲げてきた経緯もありますが、知事は、ストロー現象にも触れ街づくりの課題認識も示され、また、2200億円と推定される地下駅の設置費用の負担についても、県民および相模原市民の納得が得られるよう折り合いをつけることが基本であると発言されています。県民・市民の意見をくみ上げる意味でも、JR東海に対しては更なる情報開示を求めていくべきあると考えます。

電力需給動向については、依然として厳しい見通しも想定されています。私たちは今、エネルギー政策にとどまらず、経済や社会構造、働き方や暮らし方も含め、大きな転換点に立っています。
今回の補正予算案として、リニア中央新幹線検討・調査費が計上されておりますが、県内駅の位置、および、需要の予測や費用対効果についての検討にあたっては、まずは、JR東海に対し徹底した情報開示を求めるとともに、人口減社会の到来、産業構造の変化、さらには「限られた電力を如何に使うか」という視点をも持って、ぜひ、社会的要請にもとづく検討・調査を行っていただき、進むべき方向性の旗を明確に示していただきたいということを申し上げて私の討論を終わります。