横浜市が取り組む生活保護受給者の就労支援

自治体に期待される役割

女性と若者の働き方調査チームでは、県内自治体の就労支援事業についても調査を進めていますが、横浜市が取り組む生活保護受給者の就労支援の現状についても調べてみました。

この事業は、03年の職安法の改正によって地方自治体も無料職業紹介事業者となることが可能になったことを受け始まったものですが、横浜市は2002年〜03年にモデル実施を行うなど比較的早い時期にこの事業に取組み(全国自治体で3番目)、現在全国最大規模で事業を展開しています。
具体的には、区の生活保護事業担当部署を無料職業紹介の事業所として厚生労働省に届出て職業紹介を行うというものですが、各区に嘱託の就労支援専門員を置くと同時に、求人開拓などについては専門性を持った事業者に委託を行っています。身近な地域に窓口があることのメリットを生かし、就労困難者が抱える個別の問題に寄り添い、できるだ早い時期から専門支援員がアセスメントを行い適切な支援に結びつけてほしいと思います。

09年度の実績は、事業費1億2460万円で、2,334人を支援し、うち1,264人が就労し272世帯が保護廃止。縮減額は5億1,600万円でした。この事業は、国のセーフティネット支援対策事業の補助を受けた自立支援プログラムですが、先の事業仕分けでも、07年度の事業費14億円に対し、就労による保護費削減効果は53億円という実績が評価され、実施する福祉事務所を増やすようプラスの「見直し」判定をおこなっています。

しかし、就職後の雇用維持については、詳細なデータがとられていないようです。今後は、イギリスの再就職支援策(FND)のように、支援を委託された企業・団体に対して、雇用の継続期間に応じて報酬が支払われるようなしくみも検討し、まずは就労というところから長続きする雇用へというステップに進めると事業効果はさらに高まると思われます。

先頃、厚生労働省の「中央最低賃金審議会」の小委員会の調査により、神奈川県を始め、12都道府県で最低賃金で働くより生活保護を受けた方が高収入となる「逆転現象」が起きている事が公表されました。これについても、FNDの支援策は、最低賃金の引き上げと同時に、給付付就労税額控除などにより低所得層に対し収入をかさ上げできるしくみを導入しています。
日本においても、今後、国と地方の役割を明確にし、将来への投資という視点をもって就労支援に取り組む事が急がれます。