広島電鉄「非正規社員の正規社員化」の取り組み

 広島電鉄の非正規社員の正規社員化の取り組みについてうかがいました。広島電鉄では、2001年に契約社員制度が導入されていますが、その背景としてマイカーの増加や少子化の進行による乗客現象、加えて規制緩和の推進、補助金削減といった厳しい状況があり、次々と合理化策が打ち出された経過があります。1994年には変形労働時間制が導入されるとともに人員削減も進められ労働環境は厳しいものとなっていました。

 そういう中で、広電支部はまず人員補充によって過密労働の緩和をはかり、次のステップとして正社員化を進めるとして契約社員制度(原則1年の有期雇用)を受け入れます。同時に3年経過後には契約社員を正社員へ登用することや、契約社員全員を組合員とするユニオンショップ協定を要求し労使間の確認を行っています。

 その後、2004年には、まず正社員Ⅱ(賃金は契約社員と同等だが雇用契約の定めがない)制度を獲得します。しかし、非正規社員(契約社員・正社員Ⅱ)の固定給では将来の生活設計ができず、モチベーションを維持することは困難です。また、雇用形態の異なる労働条件を放置し、非正規社員(契約社員・正社員Ⅱ)が過半数を超えた時には労働条件が低い方へ揃えられる可能性が大きいとの考えから、非正規社員の正規化と若年層の賃金水準改善を図ることを求める運動が続けられました。
 その結果、2006年に会社の合意を得て、その後3年がかりで新たな賃金制度がつくられました。新制度における年収が、従来制度の年収を下回る正社員に対しては、激減緩和措置として調整額を支給し10年かけて減額していくことや、定年を65歳まで延長するなどさまざまな対応も図られ、2009年、非正規社員の正規社員化が実現しました。

 会社としても5億円の原資を持ち出しており、全国的にも注目の集まる広島電鉄の取組みは、単なる賃金シェアリングではなく、パイを広げで賃金格差を解消する取組みであることが解ります。
 新たな賃金制度を導入したことで、仕事の質が高まり苦情が減少していることや、結婚して家族を持つ事例や持家取得のための融資相談も増加しており、若い世代が将来を描ける環境が整いつつるという手応えを感じてらっしゃる事も伺えました。

広電支部の永年の労働組合運動、組織論にも学ぶべきことが多く、路面電車を守った運動にも心から拍手を送らせていただきたいと思いました。