貧困率15.7% ~連帯の力が問われている〜

3日、労働現場の実態を取材してきた竹信三恵子さんの講演がありました。
冒頭、ドキュメンタリー映画『フツーの仕事がしたい』(レインダンス映画祭でドキュメンタリー賞を受賞)の土屋トカチ監督の新作「会社の方が詐欺だったー大分キャノンユニオンのたたかい」が上映されました。企業の経営論理に対し自分たちは「モノではない!」と訴える姿が映し出されました。労働組合を結成し立ち上がった若者が、多くのバッシングを受け「やってはいけなかったのか悩んだ」という言葉も胸に迫るものがありました。大分キャノンが大量の派遣・請負社員の契約解除の一方で、多数の期間社員を新規に募集していた事実も見逃せません。

労働者派遣法の対象業種の拡大などの規制緩和により、非正規労働者は増加の一途を辿り、今や働き手の3分の1が非正規社員、その半数は若者と女性です。また、働く貧困層=ワーキングプアも1千万人を超えたと言われています。多くの人たちが、代表者の解雇権の濫用、パワハラ解雇のリスクにさらされています。

引き合いにだされることが多い、デンマークの労働政策についても触れられました。デンマークでは、原則的に企業が自由に労働者を解雇できることになっていますが、解雇に当たって組織率87%という労働組合が立ち会い審査を行なうことがルール化されており、さらに、手厚い就職支援のシステムがあるそうです。労働組合組織率18%の日本とはバックグラウンドが違います。

日本の相対的貧困率が、15.7%(07年度調査)であることを厚生労働省が初めて公表しました。新政権の誕生は、労働政策、社会保障政策を転換させるチャンスです。「雇い止め」を訴えた原告が、「自分の身に起きて初めて全ての世代に関わる雇用問題だと分かった」と述べたとの報道を目にしたことがありますが、貧困率15.7%という数字をどれだけの人たちが実感を持って捉えられるのか、連帯の力が問われています。

参考データ
雇用者に占める非正規雇用者の割合(06年度)
男女計 33.2%(うち男性18.4%、女性52.9%)
15〜24歳のデータを取り出してみると
男女計 48.5%(うち男性45.4%、女性51.5%)
(総務省/労働力調査票より)