「教科書採択地区の統合」に理はあるのか?

「教科書採択地区について」横浜市教育委員会は、6月23日の臨時会において、現行18区の採択地区を、2010年には全市1区に変更する要望案を了承し、神奈川県教育委員会に要望することを決定しています。24日の常任委員会では、教育委員会での検討経過が報告されました。

 採択地区変更の理由として、①「横浜型小中一貫教育」を進めるにあたりブロック内で共通の教科書を使用することで学習指導の難しさがなくなる、②学習順序や題材を統一する事により区内転出入の際の児童生徒の負担軽減を図る、③共通の教科書を用いる事で授業研究として深めることができる、といった3点が挙げられています。

 教科書採択地区については、1997年の閣議決定で、学校単位の採択も含めた採択地区の小規模化の方向性が示され、文科省も同様の趣旨を都道府県教育委員会に通知しています。横浜市も、2001年には、神奈川県教育委員会の指導を受け市内10採択地区を18地区に小規模化して来たという経緯かがあります。
 常任委員会では、この流れに逆行する教育委員会の判断の根拠を質す質疑が続きました。

 今年の3月に閣議決定された規制改革のための3ケ年計画では「教科書採択地区の町村単位の設定の容認」にも踏み込んでいますが、教育長はこれについて、相川町・清川村の事例を引き、閣議決定は政令市を縛るものではないという趣旨の見解を繰り返し述べられています。だとしても、これが、横浜市の採択地区が大規模化に向う根拠にはならず、理解に苦しみます。閣議決定でも述べられているように、何よりも、学校教育の自主性、多様性を確保することが重要なのであり、多くの議論や実践が積み重ねられてきたはずです。今回の教育委員会の教科書採択地区の統合という方針については、市民からも慎重審議や再度の審議を求める声が上がっています。ぜひ、説明責任を果たしていただくことを望みます。