介護報酬2万円アップの幻想

介護人材の確保に向けて、政府・与党は、09年度から介護報酬を3%引き上げるという方針を明らかにしました。報酬の3%アップは金額にすると約2100億円で、これを約80万人の正規介護職員に分配すると1カ月当り2万円の報酬アップが見込まれるとしています。しかし、事業者には増収分の報酬を賃金に充てる義務はありません。また、パート労働者や非正規職員、看護師、ケアマネ、作業療法士など117万人の介護労働者に分配すれば「2万円アップ案」の厳しい現実が予想されます。

社会保障審議会介護給付費分科会において、ある委員は「103万円パート」の問題にふれ、「103万円の範囲内でしか働かないということは、介護報酬を上げれば労働時間が短くなるということであり、介護報酬を上げても、何の効果もない。むしろ、マイナスの効果になる。」と指摘しています。介護報酬の課題は、介護保険制度の枠組みだけではなく、税制や社会保障制度を根本的に見直さなければ解決できない問題であるということです。

私たちも、まずは、地域で実践してきた非営利の市民事業における働き方や労働対価のあり方を問い直すとともに、介護を社会の仕事として位置づけられるよう社会のあり方や制度をも問い直していきたいと思います。