岩国からの報告「今やらんといけん」

住民・自治体の選択と国家の攻防

 NET政治スクールで、ピースリング広島・呉・岩国世話人の湯浅一郎さんを迎え、「岩国住民投票からみえること」をテーマにお話いただきました。 平和都市と言われる広島には、7つの海陸空自衛隊と6つの米軍基地が点在していますが、特に、岩国基地は、普天間同様、米海兵隊の飛行基地であり戦略的に位置づけられた基地です。工場地帯に隣接し、騒音被害とともに墜落時の惨事も懸念され、その対策として1994年には、沖合滑走路計画が浮上します。ところが、普天間基地の移駐や大型艦船用の岸壁計画も明らかになり、まさに、冷戦後の受け入れ計画と言える沖合移設計画が、住民の合意を得ないままずるずると建設されて来た経過がありました。
そんな状況で、「ここで譲ったらキリがない」という政府の約束違反に対する根強い反発と、「ヒロシマ」の足下での基地強化を許さないという世論が住民投票を成功に導きました。基地のそばの飲み屋で主人とお客が議論し、投票当日にスーパーのレジの女性がお客に「投票行った?行かんといけんよ」と声をかけ、多くの住民が、自分のこととして、考え行動した経験は、中長期的な議論にもつながっていると言います。
78年に62億だった思いやり予算は、05年には2378億にも膨れあがり、自治体の基地依存体質も構造化しています。岩国は、基地があることで住みやすいまちになったのかどうか、市民の暮しから、半世紀に渡る基地のまちを総括し、その将来を考えようと住民たちは「住民投票の成果をいかす会」を立ちあげています。
住民投票に続いて行われた市長選挙では、政策転換を訴えた自民党候補者の応援に駆け付けた安倍官房長官が「艦載機を受け入れてくれたら、医療費、給食費はただ」と演説。また、町村前外相も「国が借金を肩代わりして愛宕山に米軍住宅を建ててあげます」などと発言したそうです。でも、住民は、安倍、町村のアメにも動じなかった。
*愛宕山地開発事業
岩国市愛宕山地域の大規模な宅地開発計画。工事に伴って生じる開発残土を、岩国基地沖合移設事業に必要な埋立用土砂として活用してきたが、宅地開発は頓挫状態で大赤字を生んでいる。