ダブルケア実態調査から「ダブルケアしながら柔軟に働く」
- 25日、神奈川ワーカーズ・コレクティブ連合会・横浜国大共同ダブルケア実態調査(2015年)の、中間報告があり横浜国立大学教授の相馬直子さんの分析をお聞きする機会を得ました。ワカーズは、家事介護サービスという形で家庭の中に入り生活支援サービスを提供する中で、複合的な困難を抱えた家族の課題に出会ってきました。その多くは女性たちが担っていました。
「子育て、介護は社会のしごと」
ワーカーズ・コレクティブサービスの利用者、家族2,417人に「ダブルケアという言葉を聞いたことがあるか」と尋ねたところ、6割の人が「ある」と回答。また、自分の子どもの育児と介護のダブルケア経験者は約2割、数年先直面すると思うという人は15%、また、孫支援と介護のダブルケア経験者も約3割(数年先直面は7,7%)という結果でした。子育ても介護も社会化するしかないという流れのなかで、ダブルケアという言葉への理解が思っていた以上の早さで広がっていると感じます。相馬さんは、ダブルケアという言葉がなかった時代にも親族や家族の中に複合的なケアは存在していたし、ケアの複合化が健在化している状況については、少子・高齢化の同時進行、非正規化など雇用の質の劣化、女性の就業率の上昇、男性の長時間労働、また、地域・親族ネットワークの縮小といった要因があると指摘されています。家族がダブルケア責任を果たすのが当たり前という規範や制度は限界「男性稼ぎ型家族のダブルケア時代の終焉」とも述べられています。
政府統計「就業基本調査」「介護認定」の定義は?
政府は、2014 年 6月 に決定した「女性活躍加速のための重点方針 2015」(女性のキャリア断絶の防止)にもとづき「ダブルケア」の実態調査を実施、今年3月に調査結果が公表されています。それによると、ダブルケアを行う者の人口は,約25万人と推計されています。(女性約17万人, 男性約8万人)相馬さんは、この調査の「介護」の定義が「日常生活における入浴・着替え・トイレ・移動・食事などの際に何らかの手助けをすること」などとされており、介護の定義が限定的になっていると指摘されています。介護保険制度の中でも、生活援助サービスは、暮らしを維持するために不可欠で、家族だけでは担いきれないないところを支えていますが、身体介護に比べ報酬単価は低く設定されるなど同様の傾向があります。
「子育て支援」17,795時間の個別サポートを検証から
昨年度、特定非営利活動法人さくらんぼとの共同研究で、「子育て支援・家族支援のための個別サポート10年の事例検証」を行い、17,795時間にのぼる派遣型個別サポート事業の検証を試みました。事例検証から「複合困難を抱えた家庭を支援する仕組みがない」「リスク家庭の捕捉が属人的に行われている」といった課題が提起されています。困難家庭の多くは「複数の困難」を抱えており、親自身に支援が必要な場合が多いと言います。 “困難”の内容は、母親の病気やDVなどの母子衛生だけではなく、祖父母の介護、兄弟の障がいのケア、日本語や日本文化に壁があるなど多岐にわたっています。
ダブルケアしながら柔軟に働く
さて、この調査の目的は、ダブルケアの実態を把握して、ワーカーズ・コレクティブがめざすべき事業活動の方向性を考えることでした。相馬さんからも「生活の中で」サービスや制度のありようを考えて、制度のすき間にこぼれてしまっている問題や多様化する生活課題の実態を明らかにし、ケアラー支援のための事業化に取組んでほしいとアドバイスがありました。
さくらんぼでは、サービスの利用者がサービスを提供する側として共に働く事例も生まれていました。相馬さんのお話をお聴ききし、多様なメンバーの働き場としワカーズ・コレクティブという働き方が持っている可能性を生かしていく必要性も再確認しました。