介護の社会化を後退させない 

社会保障制度改革国民会議の報告書がまとめられ「介護保険制度の持続可能性」「給付の効率化・重点化」の観点から、介護度が低い要支援の人を対象としたサービス(予防給付)を給付からはずし市町村事業に移行することや、医療・介護の自己負担引き上げ案も盛り込ました。介護保険の改定議論が進む中、神奈川ネットでは、高齢者の在宅生活に関するアンケート調査を実施しました。

アンケートからは、日常生活の中で何に困っているか、在宅生活を続けるために必要なことが見えてきました。身体介護が必要となる前に、食事作り・買い物・ゴミの始末・外出など、日常生活に支障が生じています。また、家族や介護者は「困っている・心配している」が、本人は「困っている」という認識がないといった状況も明らかになりました。

 厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会では、予防給付の導入により悪化者数の減少・費用の減少が認められたとの調査結果も示され、要支援の切り離しは慎重にすべきとの意見も出されています。
 生活援助を通じ、生活の質を維持しながら体調管理を行なうためにも、増加が予想される認知症の対策としても、専門職が定期的に関わる介護サービスは有効です。2011年度神奈川県内全市町村の介護給付費の総計は約4300億円で、うち予防給付費は約210億円と全給付費の5%程度に留まっています。要支援認定者は介護認定者の約25%を占めています。コストのかからない生活援助の充実により在宅生活を維持し、重度化を防ぎ費用の抑制を図る事を優先させるべきです。

 現在、介護認定を受けていない高齢者を対象に、予防事業が実施されています。予防事業は、介護保険財源を使い、地域支援事業として行なわれていますが、事業効果の検証は進んでいません。要支援者を給付から切り離した場合、予防事業に吸収されますが、これまで以上に地域支援事業の予算規模を拡げ、サービスの担い手も確保しなければ受け皿にはなり得ません。

家事援助はモラルハザードが生じやすい等の理由で給付抑制のターゲットとされてきましたが、本来はアセスメント*やモニタリングを適切に行なうなどの対策を優先させ制度論とは切り離すべきです。重点化により対象者を中・重度者に絞り込めば、わずかな高齢者しか恩恵を受けられないということになります。介護保険制度は40歳以上の全ての市民が「いざという時」のために保険料を負担しています。必要な時に使えない制度であれば、若い世代からは信頼を得られず介護保険制度の持続性が問われます。

 国は、団塊の世代が75歳以上となる2025年へ向けて、「地域包括ケアシステム」づくりを推進していますが、財源をともなう具体的な制度は示されていません。地域包括ケアの目玉とされる定期巡回・随時対応や小規模多機能サービスなど地域密着型サービスも整備計画を下回っています。今後、地域ケア会議の活用も進めるとしていますが、まず、地域包括支援センターが果たしてきた役割や課題を整理すべきです。
まもなく第6期の介護保険事業計画の策定に向けたニーズ調査も始まります。高齢者をめぐる地域の課題を捉えるために、保険者である市町村が独自の調査に取組むことが求められます。
引き続きアンケート調査結果の分析を進め、政策アクションに取組みます。

 *アセスメント : 利用者がどのようなサービスが必要か検討し、決定すること