2004年4月からの市立保育園の民営化にあたり、移管先法人は、当初、市内の社会福祉法人を想定していたけれども、市外からも問い合わせがあったとして、第4回の法人選考委員会で、突然、市外の法人も含む公募に切り替えられています。これについて、法人選考委員からは、疑問の声も出されていますが、さしたる議論や説明もないまま、市外の法人も含めることも承認したいと思うという委員長の発言が議事録に残されています。
当初の方針を変更し、市外法人の参入に道を開き、様々、問題が指摘された法人を選考された経過について市長の見解を求めました。市長は、多くの法人から選んでいくメリットや監査指摘についても問題のない内容だったと答弁されました。再質問では、問題なしとした根拠を問いましたが、答弁はいただけませんでした。
証言に立った職員は、多様なニーズという曖昧な価値を持って、1年後、2年後、3年後に同じようなニーズがあるかということは把握できない。そういう意味で迅速に対応するのが行政の役目だと発言。しかし、一方で、法人選考過程で福祉局職員は「保育所は、事業を実施する運営者が経営するというよりは事業の実施に応じて補助金が支給される」などとして「一時保育に関しては、すぐに始めてくださいという条件付けはしないと」とはっきりと発言されています。2004年度から民営化された4園のうち、2年を経過し、一時保育に取り組んでいるのは1園にしか過ぎません。公立園だから民間園だからではなくこれは採算性の低い一事保育には取り組めない、つまり制度の問題だと私は思います。だとすれば、多様な保育ニーズと保育園民営化との必然の関係はないという司法の判断は間違っていないと思います。
公判で、証言した当時の担当職員は、「保育園の利用者に保育の質、内容を選ぶ権利があることを法が定めている」ことを認めています。
その上で、判決では、保育所の廃止には合理的理由と代替措置が必要だけれども、「多様なニーズにこたえることが合理的理由とは言えない」とされたわけです。
この指摘について市長はどのように受け止められているのか「そうではない」と言われるのならば、提訴審では、それを主張し立証され得るものなのか。非常に困難だと思われます。
この3年間の待機児解消に向けた横浜市の取組みは他都市に例を見ない大きな成果を上げたことは事実です。これは、市長の強い意志が無ければ成し得なかったものです。 しかし、その過程で、現場で起きてしまったボタンの掛け違いについては、行政の「無謬性」というようなことにはこだわらず、異なる意見を持つ市民との信頼を再構築するために、ぜひ、市長のお力を発揮して頂きたいと思うのです。
ハンセン病訴訟で小泉首相は「法律的には争う余地があるが、被害者の心情を考慮して上訴しない」という異例の発表をされました。市長にはそういった考えはないのか、その点については、お答えを頂けませんでしたが、控訴を思いとどまる英断に期待しています。