採択に先立って、先月末に開催された常任委員会でも、次回採択時(2年後)からの市内1採択地区化について時間をかけた議論が交わされました。
その際、私も、採択地区問題の他、危惧される事実について、以下の点について指摘しました。
まず、「新しい歴史教科書つくる会」の内紛・分裂により、代表著者が扶桑社版教科書の発行停止を求めて著作権裁判で争っており、判決次第では、採択後に使用中の教科書変更もあり得ること、それにより、今後の確実な安定供給が保障されていないという点です。
さらに、「つくる会」が他社の教科書を誹謗・中傷してきた行為について、独占禁止法第2条第9条項および第19条に基づく「申告(告発)」がなされている件です。過去にも同様の告発がなされていますが、つくる会は単なる応援団的存在で同法の規制対象外であると主張し告発が却下された経緯があります。しかし、図らずも、先の著作権裁判で、教科書執筆・原稿作成に関し、「つくる会」理事会の決定権と責任を主張したことで、状況は大きく変化しています。「申告」の対象となった教科書が本年度採択された場合、「申告」の結果により供給できなくなる可能性もあります。
公正取引委員会と文科省に申告や申し入れがされている件については、市教委でも当然把握されているべきですし、申告者から事情説明もされています。ところが、常任委員会で、これらの経緯について質したところ、教育長は「知らない」と答弁しました。事務局内で周知すべき情報として受け止めることができていなかったとすれば、教科書採択事務への認識は余りに低く、教育長は監督責任を全うしていないという批判は免れません。
教科書採択において公正をつくすことは当然なされるべきです。
教育委員各位の良識ある判断を期待しています。
* 文科省は、『教科書の採択に関する宣伝行為等について』という通知で、教科書の採択に関する宣伝行為等について、独占禁止法の規定にある「不公正な取引方法」として、他社の教科書の中傷・誹誘や採択に際しての不当な利益供与をあげ、注意喚起しています。
* 文科省による「教科書制度の概要」で、独占禁止法による規制だけでなく、文部科学省による指導として、 「発行者による他社教科書との比較対照や他社教科書の誤謬(誤謬)を利用した宣伝行為の取扱い」を制限しています。