介護保険制度がスタートして10年、拡大する給付をいかに抑制するかという視点で制度改定が繰り返されてきましたが、2012年から始まる第5期介護保険事業計画に向けても、着々と準備が進んでいます。
社会保障国民会議は、現行の給付水準を維持すれば、現在年間7兆円の介護費が、2025年には19 兆円程度から24兆円程度必要とされると試算し、さらなる制度見直しの必要性を提言しています。
その目玉が地域包括ケアシステムです。特別養護老人ホームのノウハウであるパッケージサービスを地域に分散し展開するというもので、ある地域の実践をモデルとしているようです。具体的には、おおむね30分以内に駆けつけられる生活圏内に、医療・介護等様々なサービスが提供される体制をつくるとし、そのために、自助・互助・共助・公助の役割を明確にし、とりわけ互助・共助のシステムを強化することとしています。しかし、これは、介護保険サービスから生活援助を切離し、地域住民にサービスを補完させることにより、コストを押さえるという動きにも見えます。
NPOや地域の助け合いの延長線で、インフォーマルなサービスが提供されている事例もあるでしょうが、各地域の社会資源は異なります。また、ボランティアケアをネットワークするコーディネート機能も必要となります。特定の地域の成功モデルを全国展開させることの難しさは、あの小規模多機能サービスでも明らかになっており、地域包括ケアシステムを導入するとしても、いかに自治体に裁量を持たせるかが重要なポイントとなると思います。
地域包括ケアの財源のあり方は、現時点では不透明です。予防事業を介護保険で行う事も、保険の本来目的にそぐわないと思われますし、ましてや、さらにサービス対象の広がりが予想される地域包括ケア事業にどのような財源を充てるかについては、十分な議論が必要です。
次期介護保険事業計画においては、いよいよ保険料5000円の壁を超える自治体も現れる事が予想されます。保険料負担対象者の年齢引き下げの可能性も示唆されています。しかし、将来のリスクに備える保険として、使えるサービスが用意されなければ、若者はこの制度に背を向けることになるでしょう。介護保険サービスが、「広く・浅く」、使えない制度になっていくことのないよう、現場からの具体の提案がますます重要です。