「Y150」追加補助金についての見解

 12月議会で、収支不足となった開国博Y150の赤字解消のため新たに12億6600万円を投入する補正予算議案が提案されます。
 開国博Y150を実施した外郭団体・横浜開港150周年協会の収支不足額は約25億円と見込まれており債務超過に陥っています。協会は横浜地方裁判所に特定調停を申し立て、横浜市も利害関係人として参加していましたが、市はこのたび調停委員会から提示された調停案に合意し、協会に補助金を交付したいとしています。そのためには、議会の議決が必要となります。

 協会がイベントの企画などを委託した博報堂JVへの未払金は約34億3800万円にのぼっていますが、調停案はその7割に相当する23億円を協会(11億4100万円)と市(12億6600万円)が負担し、博報堂JVも約10億3100万円は債権放棄するというものです。

 まずは、当事者の意思に基づいた自律的な解決手段であるという調停の性格上、「裁判所の勧告による」という以上の調停案に合意する合理的な理由が必要です。これまで決算審査などでも、協会と博報堂の民・民契約で進められたイベントだからという理由で、議会として契約書や収支に関わる証憑をチェックさせてもらえませんでした。あのラ・マシーン(クモ型ロボット)に対して支払われたという5億円も何に対するコストなのかは不明のままです。そういう状況で、調停勧告書は、社会的責任論に基づき市からの経済的支援を求めています。
 しかし、本来、行政活動は、法律に基づき法律に従って行わなければならないのであり、12億円余の税を投入する「社会的責任」については明確に説明されるべきです。
 「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」1条には、特定調停は債務者の再生に資するための取組みであるとその目的が書かれています。多重債務者の救済などに活用されているように、本来、人々が行き詰まった時、生かせることを支援する仕組みだと思います。債務整理を行い150周年協会を再生させることで何を期待するのか具体的に説明されるべきです。

 市の幹部の「早期の解決が妥当」とのコメントや、150周年協会の博報堂JVへの未払い金が減額されるというプラスの側面からの報道もありますが、議会としては、多くの課題を残した開国博Y150について、予算の執行の詳細を再度精査・調査し、今後の教訓とするための最大限の努力が求められます。
 さらに、報酬削減など自ら身を切る努力も必要ですし、最後の手段として税金の活用を考えるべきです。いずれにしても、協会の債権・債務が確定しない現状で、追加補助金を交付するべきではないと考えます。 

特定調停:借金の返済が滞りつつある借主に対して、裁判所が仲裁し、借主、貸主、また、その他の利害関係人(保証人など)との話し合いによって、債務者が返済をしやすくなるように、返済条件の軽減等を働きかけてもらい借主が経済的に立ち直れるよう支援する手続です。