高齢者の移動と外出を考える「外出支援は生活を豊かにします」
全国移動サービスネットワーク理事長清水弘子さん、副理事長河崎民子さんによる学習会が開催されました。河崎さんからは移動サービスの歩み、そして法制化に向けたアクションの振り返り、清水さんからは自治体調査(高齢者実態調査)から浮かび上がる外出支援ニーズや、住民がつくる「福祉交通・小さな交通」の実践事例など報告されました。
1990年代後半ごろから、県内で、ワーカーズ・コレクティブによる移動サービス事業が広がり始め、私たちも移動の権利、アクセスフリーをどう実現するかという政策課題に気づかされました。当時は、移動サービスを担うワーカーズ・コレクティブを広げていくためのプロジェクトも展開。2002年の道路運送法の規制緩和では、自家用有償旅客運送が構造改革特区のメニューとなり、この動きを捉えて神奈川県議会を始め、県内各自治体議会で福祉有償運送の制度的後押しを求めました。この時、県が、県全域に運営協議会を設置したことや、セダン特区を申請したことは、「神奈川方式」として注目を集めました。
しかし、福祉活動の領域でありながらタクシーを基準に制度設計したことや、広域にまたがり設置された運営協議会の問題など、福祉有償運送の課題は今も多くあります。2006年には、交通政策基本法が施行され、住民の足の確保は自治体の責任とされましたが、道路運送法や関連の通知による縛りも多く、自治体の動きは鈍いと言います。
河崎さんは、ライドシェアや、社会福祉法人の空き車両の活用、介護保険事業会計から補助を受ける訪問型サービスD(総合事業)といった可能性にも着目すべきと言います。(総合事業を活用したスキームについては、私は異なる意見を持っていますが。)
さらに、自動車局(地方運輸局)と交通事業者の意識改革や、自治体の福祉行政と交通行政の連携強化など、いくつかのポイントを示してくださいましたが、鍵となるのはやはり住民参加&担い手の拡大。しかし、県内の福祉有償運送の有償ボランティアや車両は減少傾向にあるそう。
移動の権利やその課題は、子育てや介護といった問題に比べるとやや注目度は低いかもしれません。また、移動サービスは、効率の良い事業ではなく採算を取るのも大変だと思います。それでも、現在神奈川県内で、27のワカーズ・コレクティブが移動サービスを提供しています。
今日は、移動サービスという事業の可能性に気付かされたという河崎さんの「出会い」のエピソードも。
〜初めは、自宅と病院との往復の移動をサポートしていただけだった利用者が、ある時「デパートに行ってみたい」と言い、デパートへ。それがその方にとっては10年ぶりのデパートだった。その後お花見にも出かけた。外出を楽しみ、やがてその景色をキャンバスに描くようになった。外出支援は生活を豊かにします。〜
総務省は、全国の買い物困難者が700万人にものぼると推計。少子高齢化や過疎化の進行とともに、生活に必要な移動・外出困難な高齢者が増え続けます。今一度、原点に返り、移動の権利に着目した神奈川発の政策アクションに取り組む、その必要性を再確認しました。