自然エネルギーで地域を再生

8月4日、飯舘電力(株)取締役千葉訓道さんを講師に学習会が開催されました。(持続可能な環境をつくる政策・制度研究会主催)
今年4月、生活クラブエナジーに電力を供給している生産者として、千葉訓道さんを紹介されお話を聴く機会がありました。「生業は農業。だからソーラーシェアリングもやる。信用金庫から金を借り、地元の建設会社が施工する、部品提供も地元企業から。収益は地元で配分する」というお話に、その取り組みをもっと知りたいと思っていました。今回、千葉さんが横浜に来てくださると聞き、楽しみに参加させてもらいました。
2011年3月11日、単身赴任中の千葉さんは、この日たまたま家族の暮らす福島で過ごしていて被災されました。避難所生活を経て一度は東京に戻ったものの、すぐに仕事を辞め福島へ。千葉さんが飛び込んだのは、土湯温泉町の復興・再生を目ざし地元の団体が出資して誕生した「株式会社元気アップつちゆ」というまちづくり会社でした。元気アップつちゆが取り組む地域自然エネルギー発電には様々仕掛けがありました。
特に注目したいのは地熱発電事業。日本ではまだ珍しい「バイナリー方式」(沸点の低い媒体を加熱し,媒体蒸気でタービンを回し発電する方式。ここでは媒体としてペンタンを使っている。)が導入されています。現地では、むき出しのプラントを見ることができ、発電量や流量が観察できる小水力発電プラントと合わせ、発電施設を観光資源化したエネルギーパークの取り組み、温泉熱を活用したエビの養殖事業など、2次産業も生み出しています。そこには雇用も生まれます。そのアイデアは目を見張るべきものがあります。
冒頭、千葉さんは「横浜は革新的なまちだ」と言ってくださったのですが、水力発電事業のために登録有形文化財でもある砂防ダム(1053年建設)に初めて穴を開けた千葉さんこそ革新的事業者。それでも、発電所設置の許認可手続きは心の折れそうな時もあったそう。建設、設備運用、FITと幾つもの分野の幾つもの法律に関わる許認可を得る必要があるのですが、省庁間のコミュニケーションは進まず課題は多い、再生可能エネルギーや温暖化対策の推進を阻んでいるその根本にある許認可制度を見直すことが必要と訴えられました。
そして、千葉さんのも一つのチャレンジが飯舘電力の立ち上げでした。2014年9月設立された飯舘電力は、50箇所の発電所を展開するに至っています。農業収入プラス売電収入が得られるソーラーシェアリングは、新規就農の呼び水となることも期待されます。ソーラーシェアリングの規制緩和により、農地転用許可期間が3年以内から10年以内に見直されるなどの制度的な後押しもあり、全国的に広がりつつあり視察も絶えないようです。
地域循環型経済を取り戻すための緻密なボトムアップの戦略と、突破力に脱帽です。バイナリー発電をはじめとしたエネルギーパークもソーラーシェアリングも見てみたい。もうすっかり千葉さんたちのエコツーリズム構想にはまってしまいました。きっと次のレポートは福島から!