女性・市民コミュニティバンクの実践
女性・市民コミュニティバンクの27年にわたる活動に終止符が打たれることになった。
今週届いた本に添えられたお手紙には向田映子さんの名前があった。理事長として女性・市民コミュニティバンクを牽引してきた向田さんは、神奈川ネットワーク運動・青葉の代理人の先輩でもある。
この間、「市民が1億2.000万円を出資し、それを基に、ワーカーズ・コレクティブが行う市民事業など203件、6億8,486万円の融資した」とある。一方で、ワーカーズ・コレクティブの新規立ち上げの減少や、日本政策金融公庫のNPOへの融資の開始によって、融資の伸びは鈍化、事業の継続は困難となってしまったのだと。
向田さんたちが当初めざしていた最も小さな非営利の協同組合の銀行「信用協同組合」の設立は叶わなかった。でも、市民のお金が約6倍の価値を持って地域を循環し、雇用を生み出し、街づくりに寄与したわけだ。向田さんは、「出資配当という金銭的リターンがなくても、社会的リターンに意義を見出す市民がいることを証明できました」と言い、この活動を「市民の誇りある財産」と表現されている。
改めて「女性・市民バンク設立趣意書」(1998年)を読んでみると、最初の1行にはこう記されている。
「お金が日本をダメにしようとしています」と。
戦後の数十年にわたり、なけなしの預貯金から金融システムの制御まで、プロ集団に委ねっぱなしにしてきたわたしたちの生活態度こそ反省しなければいけない。とも書かれている。
まだまだ反省が足りないか。
私は、出資者の1人であり、NPOとして融資を受け活動を応援してもらった立場でもあって、向田さんが「人間的な金融」の成果としてあげている「力を束ねる」ことで「物事が動く」、「共通の理想や課題に向かって歩んだことで人間同士の信頼を生み出し、関わった人々に喜びをもたらす」という言葉は、多少なりとも自分自身の経験の中にもある。
だからこそ、市民の誇りある財産を次の世代につなぐことに、何らか寄与したい。