2022年 核なき世界へ向けて

1970年3月に核拡散防止条約(NPT)が発効してから50年が経過し、2020年は5年に一度開催される国連のNPT再検討会議が予定されていました。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で開催は延期を繰り返す状況に。いよいよこの1月4日の開催に向けて、私も少し予習をと思っていた矢先に、ニューヨークでもオミクロン株が急拡大し4度目の延期が決まりました。

振り返ってみると、前回2015年のNPT再検討会議は合意文書の採択に至らず、その後、トランプ政権下で米国はロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約を失効させてしまう事態となり、中国、ロシアも核兵器の能力を向上させるなど、決して核軍縮が進んでいるとは言えない状況でした。

しかしながら、昨年1月には核兵器禁止条約(TPNW)がついに発行。その後、失効目前だった米国とロシアの新戦略兵器削減条約(新START) が5年延長されると言った朗報ももたらされました。今年3月には第1回TPNW締約国会議が予定されています。今のところ、核保有国はこぞってTPNWに背を向けた状態ですが、核軍縮に向けた新たな一歩が刻まれようとしていることは否定しようもなく、こうしたプロセスにおいて被爆国日本の役割もあらためて問われるところです。
TPNWを批准していない日本政府は、まず核保有国の関与が必要と従来からの主張を繰り返し、米国への配慮からか核兵器の非人道性を訴える機会となるであろうTPNWへのオブザーバー参加にも後ろ向きです。これでは核軍縮を主張しながら、実のところ核軍縮に消極的な国の側に立っていると見られても致し方ありません。

しかし、被爆地・広島出身の首相として、かねてより核なき世界を目指すと言明し、NPT再検討会議への参加にも意欲を示していた岸田首相はこうも言っています。期待を込めてここに記しておきたいと思います。
〜NPTの下での核軍縮の進展のなさへの焦燥感は、核兵器禁止条約の採択にもつながりました。 核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約です。〜(2020年12月9日核軍縮の実質的な進展のための1.5トラック会合より

今回、NPT再検討会議について調べている中で、NPO法人ピースデポのニュースレターに中村桂子さん(長崎大学准教授)のお名前を見つけました。中村さんは、長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)に勤務し、「北東アジア非核兵器地帯構想」の実現に向けた政策提言に加え、長崎の若者たちをNPT再検討会議の準備委員会に送り出す「ナガサキ・ユース代表団」に関わっておられました。
「多くの若者たちが米国の核の傘がないと日本の安全保障に不安を感じ、核兵器はなくしたいが今すぐにはなくせないと考えている。そんな彼らに核兵器に頼っているほうがよほど危険、核兵器に頼らないほうが安全と分かってもらえるよう取り組んでいる」と言う中村さんの言葉が
紹介されていました。
NPT 再検討会議を目前にした2005年、私は、ピースデポのスタッフとして活動されていた中村さんから北東アジア非核地帯についてレクチャーを受けたことがあります。当時、中村さんが、市民社会の中でインテリジェンスを豊かにし、お互いを見通せる関係をつくる努力が必要とおっしゃていたことが思い出されました。あれから15年、確かに運動は世界に広がり繋がっていきました。むしろ、私たちの課題は、日本国内の世論形成なのだと思います。大事な一年が始まります。