介護報酬「0.70%のプラス改定」に思うこと

0.70%のプラス改定
12月17日、2021年度の介護報酬改定率を0.70%のプラス改定とする政府方針が発表されました。
(うち0.05%はコロナ対策費として、来年9月末までに限った暫定的な引き上げ)
当初の財務省の「国民に負担増を求めてまで介護職員の処遇改善を進める環境にない」という見解を踏まえれば、プラス改定となったことを評価すべきと思いますが、物足りなさも感じます。

発表に前後して12月18日には、横浜ユニット連絡として、改めて財務省に意見書を提出しました。
その際の意見交換では、介護保険財政の仕組みとして、報酬が上がると保険料も上がることから、報酬引き上げには慎重にならざるを得ないという従来からの考え方も示されています。
例えば、0.70%のプラス改定に必要な財源は、国費としては196億円だそう。これに、1号保険料(65歳以上の方)、2号保険料(40歳以上65歳未満の方)、利用者の負担を含めると約800億円程度の予算規模となる模様。

山崎誠衆議院議員同席のもと横浜ユニット連絡会の意見書を提出


社会保障審議会・介護保険部会の議論でも、地域包括ケア推進するための、在宅の限界を高めるサービスが論点となり、当然ながら
人的基盤の確保が大きな課題とされてきました。とりわけ、従事者の年齢層が高く慢性的な人材不足に陥っているヘルパー確保に向けた対策は待ったなしです。すでに加算方式による処遇改善策だけではどうにもならないことも明らかになっています。
私たちは、一貫して、ヘルパーという特殊な勤務体系を考慮した上で、基本報酬を引き上げることを求めてきました。
1%にも満たない小幅な引き上げに終わったことは、率直に残念です。

やれるところまでは、やるけど
こんな声があちこちで聞かれます。私も、この20年間の地域社会の変化を肌で感じています。ヘルパー事業所として事業の継続の必要性は十分理解しているものの、安定的にサービスを提供していくことについては不安を隠せません。
2019年 国民生活基礎調査の概況によると、今や、全世帯の約半数の2558 万4千世帯が65 歳以上の高齢者のいる世帯となり、そのうち「夫婦のみの世帯」は827万世帯(65歳以上の者のいる世帯の 32.3%)、「単独世帯」が 736 万9千世帯(同 28.8%)、「親と未婚の子のみの世帯」が511万8千世帯(同 20.0%)という状況。

2019年 国民生活基礎調査の概況より

介護労働力の不足や、その背景にある財源の不足の問題を、給付抑制と連動する互助や共助、あるいは、介護予防の推進で乗り切れるはずもありません。要支援者の新たな受け皿としても期待された総合事業(住民主体の活動)が進まない理由も、「実施主体や担い手がいない」ことなんですから。(*1)社会保障費抑制政策を見直し、その上で介護保険の財源構成の見直しも検討すべきところに来ているのだと思います。

負担を分かち合うということ
共助や互助も含めて直接的に地域福祉を担うこと、あるいは、保険料を負担するという形で制度を支えるといったことについて、どんな風に合意形成できるだろうか。どうすれば、10年後、20年後の自分や社会の状況を予見しつつ、制度のあるべき形に関心を持ってもってもらえるだろうか。
今現在介護を必要性を感じない方にとっては、優先順位の低い話かもしれない。目の前のことで精一杯だと言う方もおられると思う。でも、「介護従事者が自らやりがいのある仕事を選んでいるのだから、低賃金でも良い」などと思っている方はいないと思いたい。
国や自治体は良いことも、悪いことも包み隠さず情報を開示すべきだし、私たち現場もその努力はしたい。まだまだ、諦めるわけにはいかない。

(*! NTTデータ経営研究所(2019)「介護予防・日常生活支援総合事業及び生活支援体制整備事業の実施状況に関する調査研究事業」における自治体の回答より)