「介護保険制度改定議論」参議院選挙後は急ピッチで進みます

いよいよ、10月から消費税が10%に引き上げられます。
政府は、見込まれる増収分の税の使い道として、2兆円規模の政策パッケージを実施するとしてきました。まずは、そのうち1000億円を使って、介護職約20万人を対象に処遇改善を進めるという件について。
これは、「特定処遇改善加算」と呼ばれる新たな加算の仕組みですが、その条件は、「(加算によって)月額8万円の賃金アップとなること、または改善後の賃金が年収440万以上となること」などとされてます。
えっ?440万円って?…そんなに貰ってる人、私の周りにはいないなあという感じでなんですが…。
居宅、訪問、通所の事業に関わる身としては、正直、実感のわかない数字です。

平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要より

2018年度の処遇状況等調査結果では、介護職員の平均給与額が300,970円となったことが報告されています。うち基本給の部分は181,220円。介護報酬が上がらない中で「加算方式」による処遇改善では基本給をしっかり底上げすることは難しく、手当てや一時金を含めた給与の引き上げという形にならざるを得ないのです。

また、非正規職員の給与は職種別に見るとマイナスになっている部分もある。訪問介護事業は、7割が非正規雇用職員。なるほど報酬は中々上がらない。苦しいわけだ。

「時給1000円をめざして!と言いながら介護現場で20年。10月には最低賃金が1011円に引き上げられる。ますます事業は厳しい」
「よく考えたら20年以上キャリアを積んで最賃レベルでモチベーション下がる。今訪問しているような方達は、いずれ切り捨てられるのだろうなと思いながら現場で踏ん張るしかないのか。」という仲間の言葉がつき刺ささります。

処遇改善加算の財源は、国と自治体が1/2づつ負担します。だから処遇改善のためにと国が1000億円予算化すると、自治体も1000億円の予算が必要になる。公費のみ、保険料での負担は無しというスキームなので、国民の合意を得られやすいと言われていますが、国の予算に連動して自治体が1/2を負担することとなるため、自治体はこのスキームでの処遇改善を歓迎していないのではないかと思う節もあります。

野党は、議員立法で、国が100%負担する形の処遇改善法案を提出している
のですが、今の情勢で可決・成立は難しい。政権交代が起きない限り事業者も労働者も自治体も幸せになれなさそう。

もう一つ、処遇改善とともに、気になるのが、11月にも結論が出される要介護1、2の生活援助の給付外し。
3年前にも似たような議論ありました。要支援1,2の生活援助を給付から外すことになって、受け皿(総合事業)を自治体の責任で作れということになりました。ところが、受け皿作りは進まない。自治体の責任で実施する総合事業だから、もはや国は実態把握にも努めない。国会での質疑もアンタッチャブルな領域になっているそうです。こんな状況で要介護1,2を切れるのか?とも思いますが、声を上げなければしれっと切られるかも。

私は、事業者として要介護1、2の方たちの暮らしに触れる機会があり、この給付カットは高齢者の在宅生活に相当なダメージとなるだろうと予想します。
足が悪くて外出できないお一人暮らしの方、ヘルパーさんが買い物してくれなかったら、食べていくことができない。ふらつきがありご自宅での入浴や家事は困難。デイサービスで入浴してもらい、1日1食はバランスの良い食事を摂っていただく。そうした支援がなくなれば、日々の暮らしが成り立たないという方たちがいる。家族も支えきれない。
高齢者虐待件数は増加傾向にありますが、データからは、介護保険サービスに繋がることで虐待を防げる傾向にあることがわかります。

平成 29 年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」 に基づく対応状況等に関する調査結果

なんとかしたい。必要な介護を提供するための財源のあり方や、介護の担い手を確保するといった課題に正面から切り込むためには、どうすればいいのか。
 3日には、横浜市に政策提案を続けてきた横浜ユニット連絡会のメンバーと議員会館へ。今後の活動を考えるために、山井和則衆議院議員、大河原雅子衆議院議員との意見交換の機会を得ました。
11月には結論を出すという社会保障審議会介護保険部会の議論も視野に入れて、新たらなアクションの検討を始めました。明日は、その作戦会議です。また、続きは来週のレポートで。