お台場海浜公園の水質問題から考える

2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、お台場海浜公園で開催された水泳オープンウオーターテスト大会(8月11月)の参加者の「トイレのような臭い」といった発言により、ここ数日、SNSなどでもこの海域の水質を心配する声が聞かれます。

すでに2017年の調査で、マラソン水泳とトライアスロンが行われる予定のお台場周辺の海域で、競技を開催するための水質許容基準を大幅に超える大腸菌や、便大腸菌が検出されたことが明らかになっていました。
(以下、東京都のHPより)
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/10/06/09.html

その原因は、東京湾に流れ込む汚水。
東京の下水の8割が、し尿も含む家庭排水と雨水を一本の管で集める合流式で処理されています。合流式下水道では、大雨が降って、再生センターの処理能力を超えると、汚水もまじったままの水が未処理のまま川や海に放流されてしまいます。
(その他は分流式下水道。分流式は生活排水と雨水をそれぞれ別の管で集める方式。)

当然、公衆衛生・水質保全・景観上の観点から対策が必要で、2003年の下水道法施行令の改正で、原則10年間(大都市は20年間)で合流式下水道の「改善」が義務付けられていました。合流改善のための国交省の補助事業も延長されており、現在進行形で改善事業に取り組む自治体もあるよう。
(
以下国土交通省HP)
http://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kasen_db/pdf/2018/8-2-5.pdf

合流式8割の東京も、下水道施設の維持管理、地震や浸水への備えと、様々な課題に直面している下水道事のこれからを考えると、合流改善事業の優先順位をググッとあげるのも難しいのでしょうか。
近頃は、各地でゲリラ豪雨による災害が発生していますが、特に、アスファルトやコンクリートで覆われている都市部では、以前にも増して貯留施設の運用が難しくなっています。あらためて、浸水対策と合流改善を一体的に進めることとして、雨水貯留・浸透施設設置を促進することも必要ではないでしょうか。お台場海浜公園の水質問題から、合流式下水道の課題に多くの注目が集まっている今こそ、合流改善の実効性を高めるチャンス。

五輪開催に向けては、お台場の海域に3重の水中スクリーンを設置する方針も伝えられていますが、競技の規模を考えると、かなり広範囲な水域で対策が講じられることになり、莫大な費用が必要になります。
しかし、仮に、水中スクリーンの効果が確認できて(根本的な水質浄化は望めないとしても)、お台場を競技会場とするという決断をするのであれば、大会終了後にも活かせる形で施工し、親水エリアとして広く市民に還元してほしいものです。