「横浜市訪問型生活援助サービス」始まる
財務省が仕掛けた介護保険給付から要介護1,2を外すという議論は、厚労省の土俵際の踏ん張りもあり「見送る」方向だと言われています。しかし、給付継続と引き換えに「生活援助サービス」の報酬単価を引き下げることも伝えられています。
地方分権の試金石とも言われた介護保険制度。保険者である自治体はどう考えているのでしょうか。
10月6日、横浜市会の決算特別委員会(健康福祉局審査)で、鯉淵局長は国の議論に対して「介護保険制度が重要な役割を果たしている。考慮してほしい」と現場を預かっている立場からの所感を表明。同時に「給付を重点化することは「持続可能な制度」とするために避けられない」として、国の議論に一定の理解も示していました。
2015年度の制度改定によって、要支援1、2の介護保険利用者に対して提供してきたサービスは一部給付から外されました。その受け皿として、基準を緩和し報酬を下げた新たな訪問介護やデイサービスが始まっています。しかし、報酬を下げた事業への参入が進まない状況も伝えられています。
毎日新聞 10/1「新介護 軽度向け事業所半減 報酬減で採算懸念」
(引用開始)~157の先行自治体に聞いたところ、報酬は平均して2割減に設定されていた。手を挙げた事業所は訪問介護で50%弱、デイサービスでわずか30%弱だった。~(引用終わり)
今年10月から、横浜市でもこの基準緩和型のサービス「横浜市訪問型生活援助サービス」(*1)が始まりましたが、約800の訪問事業所のうち3割程度の事業所が指定申請をしたという状況。報酬は現行サービスの90%で、担当課は「他自治体に比べ高めの報酬」と言います。 といっても、基準緩和型サービスは、現行サービスのように介護職員処遇改善交付金の対象にはならないので、厳密には現行サービスの80%ほどの報酬になるのではないかと思います。
基準緩和型サービスは、資格のない人も一定の研修を受講することで従事できるとされていることから、市は介護人材のすそ野を広げることにもなると見込んでいるよう。要は、生活援助を主とする基準緩和型サービスは新しい人を雇用して提供し、資格を持っているヘルパーさんは身体介護を重点的に提供すればよいでしょう、ということのようです。
そんなふうにやれるかな?
事業者として基準緩和型の訪問サービスに参入する理由を挙げてみます。
『目の前の利用者のために参入せざるを得ない、利用者の多くは要支援の人、収入減にはなるけどやらなければ収入が無くなってしまう(仕事がなくなる)ので参入せざるを得ない』
不安もあります。
訪問介護事業所のうち今年度上半期(4月〜10月の半年間)に廃止届けを出した事業所数は38事業所。(2015年度は年間58事業所が廃止)
『現状でも事業継続は厳しい、さらに報酬が下がれば運営できないかもしれない、無資格者への研修も事業所の責任で行うことになっている。研修を実施することも含めた報酬90%(対現行サービス)なんだと言われても…。新しい人に仕事まわして今働いているヘルパーに仕事はあるのか?必要とされているサービスは圧倒的に生活援助サービスです。』
14日には、横浜ユニット連絡会(*2)と横浜市の担当課との円卓会議であらためてこういった現場の声を伝えました。担当課によると、新たな基準緩和型のサービス提供に向けて求人を出している事業所もないそう。これで介護人材は広がるのでしょうか。
何よりも、生活援助のトータルな援助としての価値や重要性を伝えたいと思って臨んだ円卓会議。言われているような、自立を妨げるような利用、家政婦のような利用=モラルハザード論で、生活援助が土俵際に追いやられている現状は残念でなりません。
「持続可能性」=給付と負担のバランスをはかることのみでは終わらないし、制度はあってもサービスなしという状況を持続可能とは言わないと思います。
次のアクションは「介護の日フォーラム」!引き続きアクションします。
(*1)「横浜市訪問型生活援助サービス」(横浜市介護予防・日常生活支援 総合事業の緩和した基準によるサービス)
(*2)横浜ユニット連絡会:横浜市内で活動するワカーズコレクティブ、NPO、生活協同組合などが参加する連絡会