「地方議員年金」その後〜調査を再開しました〜

2011年に廃止された地方議員年金制度について“復活の動き”があると報じられています。
地方議員年金、復活の動き 自民本部検討「人材確保に」(朝日新聞)
自民党本部に地方議員の年金を検討するプロジェクトチーム(PT)が発足したことや、全国都道府県議会議長会が地方議員が年金に加入できるよう法整備を求める決議をしたことなどが伝えられています。

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 議長会の決議は、昨年の統一地方選で平均投票率が過去最低になったことや、無投票当選者の割合が高くなったとして「国民の幅広い政治参加や、地方議会における人材確保の観点から」新たな年金制度を整備すべきという主張。要は、地方議員が被用者年金制度(厚生年金)に加入できるようにしてねという要望で、これは2012年に総務省が提示した案でもあります。
議長会が指摘する課題については、政治への信頼や期待を取り戻すことこそが実効性のある対策であろうと思います。多様な立場の人が議員として活動できるように、立候補に伴う休暇を保障する制度や、議員活動を行うための休職・復職等の制度の導入等についても、具体的な議論を進めていくことも必要であろうと思います。こういったことは、財政破綻を目前に議論された地方議会議員年金制度検討会( 2009年)でもすでに指摘されていました。
いまどき政務活動費の不正問題で辞職が続く地方議会の姿が報道される事はとても残念。この問題で富山市議を辞職した人の「議員年金が廃止されて、あらためて老後の生活が心配になった」という発言にもがっかりでした。国民年金だけの老後が心配というなら、国民全体の不安を解消できる仕組みの必要性に言及してほしい。
そもそも、地方議員年金の廃止といっても、制度廃止の時点で、すでに議員年金を受給していた人には引き続き議員年金が支給されているし、現職議員で議員年金の受給資格を有する人(在職12年以上の人)も、退職年金または退職一時金を選択することができるとされたし。この富山市議だった人は6期も務めている。この人もらえる人じゃん!そんなわけで、地方議員年金制度の完全廃止までにはこれからまだ50年ほどかかり、最大1兆3600億円もの税金が投入されます。地方議員が厚生年金制度に加入するとなれば、保険料の半分を税金で負担することになり、毎年170億円程度必要とされるそうです。これは、もう廃止したものが形を変えて出てきたとしか言いようがない。「復活」と表現したくもなる。選挙によって選ばれる議員を被用者と同様に扱うこともしっくりこない。
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市議会議員共済会事務局にヒアリング


こうした新たな議員の年金制度を検討する動きを受けて、私もあらためて「市議会議員共済会事務局」に、自治体が毎年度共済会に払い込んでいる負担金などの状況について聞いてみました。2016年度の負担金の総額は、422億7,155万8千円
各自治体の負担金の額は、4月1日現在の標準報酬月額×4月1日現在の議員数(実数)×12か月×政省令で定める負担金率で算出され、共済会から各議会事務局に通知されます。ちなみに、負担金率は、その年度に必要となる議員年金や退職一時金の総額を報酬や議員数で割り返しただけのものでした。
横浜市も4億円近い負担金を拠出していました。
(報酬月額)953,000×(議員数)84×(負担金率)63,7/ 100=398,099,520円(2015年度決算)
公費を投入し続けた挙句、2011年には破綻すると言われていた給付金の原資となる基金残高は、現在約400億円(2015年度決算で356億4800万円の残高)だそうですが、「さすがに運用益は確保できません」とのこと。
その他、別会計となっている業務経理の会計規模は3億円。こうした経費も自治体が按分して負担しています。共済会の職員は14人(非常勤職員も含め)。こちらの会計について「主に年金支給事務に当たる職員の人件費などに充てられるのか」と尋ねてみたところ「年金給付システムの運営にかかるコストも大きい(数千万単位)」とのこと。「共済会の決算資料はインターネットでも見られます」と言われ、「では後ほど見てみます」とここで引き下がったのだけど…市議会議員共済会の決算に関する公告というのを見てもちっともわからないです。あー残念。
「共済会としては、たとえ地方議員が厚生年金制度に加入することになっても、今の年金給付事務は粛々と続ける。何も変わりません」ともおっしゃっていましたが、ここは整理が必要なはず。
県内自治体の負担額の聞き取りも含めて、本格的な調査はこれからです。
つづく
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市議会議員共済会資料より