いよいよスタート「障害者差別解消法」自治体の取組みは?
今年4月1日から、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」)が施行されます。障害者差別解消法では、行政機関に対して「社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない」としており、民間事業者に対しても同様の努力義務を課しています。国や自治体に対し、法律や法律にもとづく基本方針にそって、職員が守るべき約束「職員対応要領」策定の他、相談や紛争の防止等のための体制の整備、啓発活動などを求めています。また、障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うために「障害者差別解消支援地域協議会」を組織することができることも謳われています。
この法律によって「障害者の生活が大きく変わる」と、期待が寄せられています。法律の施行に向けて、横浜市では、市が行わなければならない取組について提言するため、横浜市障害者差別解消検討部会を設置、差別事例を募集したところ993件もの事例が寄せられたとのことです。しかし、障害者差別解消法施行を目前にして「準備の自治体わずか1%」という報道(2月12日、東京新聞)もありました
現在開会中の横浜市会には、「横浜市障害を理由とする差別に関する相談対応等に関する条例案」が提案されています。市は「相談対応により解決が図られない事業者による差別事案について、障害者等が 市長に対し、あっせんの申出ができることを規定する条例」と説明しています。よく読んでみると、「相談対応等に関する条例」とされながらも、相談体制に関する規定がない。用語の定義や基本理念、市の責務、市民などの責務といった一般的な条項もありません。あっせん手続き自体の公平性の確保のための方策も見えません。13条2項には、「小委員会は、あっせん案を提示することが特に困難であると認めるとき、又は明らかに不適当であると認めるときは、小委員会の委員全員の意見をもって、あっせんを終了することができる。」との規定もあり、どこまで実効性のある解決につながるのか疑問です。
神奈川県は、まずは職員対応要領を策定し、協議会についても2016年度当初に設置するとしています。障害者施策審議会で議論されている要領案は、内閣府と厚労省の要領を合体したようなもので、非常にシンプルな内容でした。そもそも、審議会での議論は非常に見えづらく、県が実施したアンケートによせられた回答数も188 件に留まっています。例えば、和歌山県は要領の策定プロセスでパブリックコメントを実施しており、愛知県の要領については、障害者差別解消推進条例に規定され「 県の機関は、〜要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。」との文言もありました。
横浜市障害者差別解消検討部会の提言には、「何が差別か」「合理的配慮はどのように提供すべきか」については、とにかく障害当事者の声に耳を傾け、一つひとつを体験するごとに、関わった人々で、そして市民全体で必死になって検討していくことが求められます。」との記述があります。共に生きる社会に近づけるために、ボトムアップ型で丁寧に取組むとともに、要領等の策定の過程も含め、オープンにすることが求められます。