介護事業者の倒産が過去最高に…

 10月1日付の読売新聞で、今年1~8月の介護事業者の倒産が過去最多だった昨年の年間倒産件数を上回ったことを伝えています。(「介護事業者倒産が過去最多…報酬引き下げ影響か」)また、「介護報酬の引き下げの影響が本格的に表れるのは秋以降とみられ、今後、さらに倒産が増える可能性がある」(引用終わり)とも指摘しています。
 横浜市の訪問介護、介護予防訪問介護、通所介護、介護予防通所介護、居宅介護支援の事業者数について、昨年、一昨年の同時期と比較してみると、事業への参入が減少傾向にあり、廃止件数は増加している状況が確認できます。

2015年度の介護報酬改定は、全体で2.27%のマイナス改訂となっており、介護予防通所介護は20%を超える減額となりました。ならばと、新たに創設された「認知症加算」をとるためには、定められた研修を受講する必要がありますが、高額な研修費もネックですし、研修にスタッフを参加させるのものなかなか大変。介護予防訪問介護の介護報酬は4.8%の減額に加え、8割程度の事業所で算定されていた認知症加算と独居高齢者加算が基本報酬に包括されたことでさらなる報酬減となる可能性も指摘されてきました。8月からは、一定の所得がある人の介護保険サービス利用負担割合が2割に引き上げられたため利用を控える動きも見られます。
 NPO法人神奈川県介護支援専門員協会では、制度改正に伴う事業所収入への影響調査を行っており、先日私が関わっている居宅介護支援事業所にも調査協力の依頼がありました。調査項目に従って利用者数や介護保険収入を昨年度と比較しながら書き出してみると、昨年度よりも利用者数を増やしているにも関わらず収入はダウン。

 国は、もともと報酬改定によりサービスの淘汰・適正化を進めたいという意向だったのだとは思いますが、これでは、安倍首相の掲げる「介護離職ゼロ」の実現も危ぶまれます。介護離職ゼロというのは、あくまでも介護を理由に離職せざるを得ない人を無くそうということらしいのですが、まず、介護の仕事を続けられない現実にこそ目を向けてもらいたいものです。  (公財)介護労働安定センターが実施した 「介護労働実態調査」によると、介護サービスを運営する上での問題点として、約半数の事業所が「良質な人材の確保が難しい」( 53.9%)「今の介護報酬では人材 の確保・定着のために十分な賃金を払えない」( 49.8%)と回答しています。
 先ごろ川崎市が実施した訪問、通所事業者アンケートでは、まず包括報酬について尋ねています。11月末に予定されている事業者説明会でアンケート結果を公表するとのこと。その結果にも注目しています。
 神奈川ネットでは、各自治体が実施するアンケート調査内容やその結果、事業者・市民への説明会の開催の有無などについて調査を行っています。皆さんとも情報共有しながら政策提言に繋げていきたいと思います。