心配です。駆け込み実施の「総合事業」

「このところ、ケアマネさんから要支援の利用者さんの受け入れを打診される、どうも要支援者の利用を断る事業者が増えているようだ」という声が聞こえてきた。「○○デイサービスが閉じた、△△デイも閉じた」そんな話も聞く。なので、横浜市に聞いてみた。確かにこの4月〜6月の通所事業の廃止件数は昨年、一昨年の同時期に比べて増加している。当然だろう。介護保険制度の改定により、要支援1と要支援2の介護予防通所介護の介護報酬は20%を超える減額となっているのだから。介護予防訪問介護は、4.8%の減額に止まっていますが、それでも厳しい事業運営を迫られています。
厚生労働省には、介護予防・日常生活支援総合事業(新たな総合事業)の移行を早期に進め、緩和した基準で実施される事業の下地作りを進めたいという思惑があるのかもしれません。でも、周辺の事業者からは「緩和した基準で早期に事業化を進めてほしい」などという気運は感じられません。
横浜市は、7月に、「総合事業の検討をすすめるための基礎データとしたい」として、訪問介護、通所介護事業所等へのアンケート調査を実施しています。アンケートには「要支援者のうち訪問介護員による専門的なサービスが必要と認められるケースは何%程度いるか?」といった設問や、「訪問型A(緩和した基準に寄るサービス)を現実に想定することができるか?」といった設問がありました。私は、予防介護の家事支援は単純な生活援助ではなく、要介護状態に進行させないためにプロの訪問介護員が担ってきたサービスであり、レスパイトデイサービスも介護を担う家族にとって大切なサービスだと思っています。専門的なサービスが必要でない要支援者がいるとすれば認定プロセスの問題として対策すれば良いはずです。『訪問型Aを現実に想定することができる』事業者なんてそんなに多くはないだろう!と思っています。また、シルバー人材センターに委託しているモデル事業「生きがい就労支援スポット(*1)」を通じた就労希望者の斡旋希望の有無も尋ねていますが、この事業がどれだけ知られ、どれだけ実績があるの?そもそもプロの事業者にそれ聞きますか?と思ったのは私だけでしょうか。
今年6月1日に開催された「第1回 横浜市介護保険運営協議会 議事要旨 」には、以下のようなやり取りもあったことが記されています。
(引用開始)
委員:要支援1、2で現在サービス受けている人が今後どうなるのかといった不安 を持っているという声をよく聞く。また国が担い手として期待している住民 主体の支援組織がどの程度あるのか不安なところもあるが、既存の団体の中 には意見を求められるのを待っているところもあると聞いている。 市としては慎重に対応策を進めていると思うが、関係者にヒアリングを行っ たりアンケート調査などを行う、もしくは有識者会議などを開催する何らか のムーブメントを起こす必要があるのではないか。 この事業は市町村事業であり、横浜がこれまで積み上げてきた独自性を生か すためにも、幅広い論議のできる検討のプロセスを期待したい。

担当課長:昨年度計画を作る際に保険料など介護保険の制度的な枠組み等の議論はしてきたが、多様なサービスについて遅れてしまったことはお詫びします。(引用終わり)

 本来、総合事業の実施にあたっては、膨大な事務対応が必要となることから今年4月から3年間の猶予があったはず。それでも予算確保(*2)のために今年度中の実施を決めたのは横浜市です。駆け込みでのスタートの判断の是非も問われる事態ですとにかく、今どき、「運営協議会で報告していないので、調査結果は公表できません」なんてあり得ないのです。早急にアンケート調査の結果を公表してください。
(*1)高齢者の心身の状況に合わせた就労や地域活動などを紹介し、社会参加を促していくための相談窓口
(*2)各年度の新総合事業予算額の上限は前年の事業費用に後期高齢者の増加率を乗じた 額となっている。平成29年度末までの特例が設定されており、移行後初年度の費用の上 限額は移行前年度の予防給付等の実績額に110%を乗じた額とすることができる。 
その後のレポート:「イライラしている」傍聴記〜横浜市介護予防・日常生活支援総合事業の展開に関する検討会〜