現場から始めるダブル・ケア支援 

 ダブル・ケア支援をテーマに開催されたフューチャーセッションに参加し、研究者や、企業やNPO・ワーカーズ・コレクティブの皆さんの報告をもとにケア者への支援のあり方を考える機会を持ちました。
 ダブル・ケアは、育児と介護の同時進行など家族の中にある複数のケアと定義さています。少子・高齢社会や、晩婚化、晩産化の進行、単身世帯の増加など、ダブル・ケア世帯の増加要因はいくつも挙げられます。そうしたケアラーを支える地域のつながりの希薄化も指摘されてきたところです。

 瀬谷で子育て支援事業を展開されているNPO法人さくらんぼの伊藤保子理事長からは、ダブルケアの概念として、育児と介護のみならず、母親の精神疾患と子育て、夫の病気の看病と子育て、外国籍の嫁支援と孫育て等、幅広い捉え方が示されました。また、その解決策の一つとして一時保育サービスを豊富にしていくことや、子育て支援事業所と介護事業所の連携を図ることなども提案されました。かつて青葉区で展開された、地域ケアプラザにおける地域子育て支援拠点のサテライト型事業も、時代を先取する良策だったのではとの思いも募ります。
 私は、地域でNPO法人ピッピ親子サポートネットで活動していますが、ピッピは認可保育所の運営に始まり、ヘルパーステーションや、小規模保育とデイサービスが同居する複合サービスも提供する事業者になりました。人や家族に向き合う生活支援を模索する中で、自ずと法人の取組みも広がり、保育と介護の事業の壁を超えて働き合う実践も生まれてきたのだと思います。
 厚生労働省でも、人口減少対策として介護福祉士と保育士の資格を統一に向けた検討チームも発足させていますが、ぜひとも、ボトムアップの議論を展開してほしいところです。
 
 セッションの冒頭には、横浜市の男女共同参画理事が、あらためて、子育てや介護が主に女性たちのアンペイドワークで担われて来た歴史や、性別役割分業意識の問題に言及されていましたが、福祉事業の制度に関わる中でも、家事を始めとした生活支援サービスへの評価の低さを感じる事も多くあります。例えば、介護報酬において、生活援助の単価は身体介護の単価よりも低いとか。
 神奈川ネットは1997年から
アンペイドワーク調査を重ね、女性たちの「ながら仕事」の実態を明らかにし、そういった仕事を外部化、社会化する試みとしてワーカーズ・コレクティブによる事業の立ち上げと制度化を進めて来ました。また、「女性と若者の働き方のアンケート調査」では、家事・育児・介護等を担うことが多い女性と経営者の双方が、配偶者控除や第3号被保険者の制度を「調整弁」として使ってきたことが浮き彫りとなりました。結果的には雇用の劣化につながり、その影響は若者世代にまで拡がっています。女性が活躍できる社会をめざすのであれば、福祉制度のみならず税制や社会保障制度の転換も同時に進めていく必要があると思います。
  いずれにしても、現場にはダブル・ケアを政策として進める上での多くヒントがあります。昨日は、中小企業の取組みも伺い、地域の企業とのコラボイメージも持てました。出会いは未来につながりますね。良い機会を頂きました。