「地方自治体の将来像と議会」全国都道府県議会議員研究交流会報告

全国都道府県議会議員研究交流会でした。基調講演で神野直彦さん(東京大学名誉教授)のお話を伺いました。

 神野さんは講演の冒頭、まず、地方分権を進め経済成長を遂げてベビーブームをもたらしたウェーデンのスティーグ ・クレッソン氏の幸福や豊かさを問い直す詩を紹介されました。
 日本社会においても、工業社会の終焉とともに、「質」の経済、「良識」の経済への転換を図ること、そのために全ての社会の構成員が知恵を出し合うことが必要であるとのお話を伺い、あらためて、生活の場の創造という地方自治体の使命を強く意識する機会となりました。「改革」は常にそのスピードを問われますが、神野さんのアドバイス、「ゆっくり・冷静に・道を間違えないように」も肝に銘じたいと思います。

 「人口減少社会における議会・議員の役割」をテーマとした分科会では、金井利之さん(東京大学院法学政治学研究科教授)から、大都市における少子化問題にも目を向けた問題提起がありました。
 「地方創生」に象徴される大都市圏と地方圏の二項対立論自体が既存の思考の枠組みに拘束されたものであり、本質的な少子化対策に踏み込めない要因となっているという指摘とともに、家族観・労働観の改革に取り組む必要性について話されました。また、財政再建問題についても「収支を合わせることに汲々とし、長期的な経済財政体制を構築できずにいる」という指摘と合わせて、縮小再生産がもたらす結果への懸念を表明されています。
 人口アンバランス、過疎の問題は1970年代から意識されており、人口減少社会への対応も非常に重要な政策であることは論を待たないところです。しかし、その要因やそもそそもの問題設定のあり方が問われているのだと思います。『多くの議員ががいるでしょう』という「視座の多様性」への期待も込めて、刹那主義、近視眼的施行を超えて議論せよという金井さんの提起、しっかりと受け止めたいと思います。