ソウルスタディツアー報告3「マッポ・パーティ」のチャレンジ

ソンミサン(小高い丘)マウル:ソウル市麻浦区の標高60mの小山をとりまく地域。ソンミサン開発計画への反対運動もマッポコミュニティの成り立ちに大きな影響を与えています

 

 ソウルマッポ区ソンミサン周辺10万人規模のエリアの自治モデルと、ローカルパーティ「マッポ・パーティ」の取組みについて学びました。
 私が初めてマッポのまちづくりに触れたのは、2005年、神奈川ネットの韓国スタディツアーでした。マッポ・コミュニティの活動は、「要求と必要」、「自発性に基づく会議」をベースにした当事者主義の運動です。当時は、民主化運動を経験した方たちが中心となり、子どもを中心に据えたまちづくりが始まったところでした。
 その後、2007年7月には、マッポ連帯とマッポFMの皆さんが神奈川を訪問され、交流を重ね、変化し続けるソウル、マッポコミュニティをもう一度訪ねてみたいという思いを強くしていました。

「まちの台所」

あるタナティブスクール、まちの本屋さん、医療生協、共同住宅

 9年前にマッポ生協の組合員数は約1000人と聞いていましたが、今では約12、000人の組合員を抱える生協に成長しています。建設中だったオルタナティブスクールはしっかり地域に根付きインクルーシブ教育が実践されていました。「まちの台所」も変わらずマッポのまちにありました。建築中のものも含め7棟の共同住宅、まちの本屋さん、カフェとまちづくりは進んでいます。
 現在、住民の生活課題の解決のための住民グループ会議は、テーマ別に70余りあり、多様性を認め討論し意思決定するその過程も重んじられています。核家族化が進む都市型のミュニティで、対話を重ね、自ら投資しさまざまな拠点を作り、顔の見える関係を結びながらまちづくりが進んでいます。ソウルのまちづくりのモデルにもなり、年間5000人の視察もあるそうです。

  さらに、マッポ共同体の住民自治の活動において特筆すべき事は、目に見えるコミュニティのインフラの整備のみならず、常に、政治参加が強く意識されてきたことであると思います。意思決定への平等な参加や対等な関係を重んじる姿勢にも、マッポコミュニティの政治性が現れています。
 住民運動を政治につなげるために、2002年から、住民リーダーを議会に送るチャレンジがくり返されてきました。2014 年の統一地方選挙では,ローカルパーティ「マッポ・パーティ」を立ち上げ、3人の候補者を擁立しています。パク・ウォンスン市長の応援も受けた選挙戦でしたが、選挙直前に、セウォル号の沈没事故が発生し、立ち上げ間もないマッポパーティも大々的なキャンペーンはできない状況でした。情勢的にも、与党(セウリ等)vs野党(新政治連合)という構図がクローズアップされるなか、政党として認められないローカルパーティが選挙を戦う難しさもあったと思われます。
 候補者を当選させることはできませんでしたが、マッポパーティについては、今後、あらためて組織化を進めていきたいとのことでした。厳しい情勢の中でも、幾度も選挙にチャレンジを続け、そのことにより共同体がエンパワーメントされてきたのではないでしょうか。貴重な経験を共有させていただき、私たちもローカルパーティの原点を捉え返す良い機会となりました。(続く)