子ども・子育て支援に積極的に投資する社会の合意をつくる〜ベビーシッター事件から考える〜
ベビーシッターに預けられた横浜市在住の2歳児が死亡するという痛ましい事件が起こりました。面識のないシッターに幼い子どもを預けたシングルマザーの責任を問う声も聞かれますが、一人で子育てを担い、かつ、安定した生活を維持することの困難さは想像に難くありません。そもそも神奈川県の保育所整備率は47都道府県のワースト1であり、6歳未満の子どものいる世帯の約9割が核家族であるなど、子どもや子育て家庭を取り巻く環境は大変厳しい状況です。
横浜市では、24時間型緊急一時保育サービスや、ひとり親家庭に対し生活援助や子育て支援を行う「日常生活支援事業」、「トワイライトステイ事業」「ショートステイ事業」 なども実施しており、一見多様な支援メニューが用意されているようにも見えます。しかし、市内2カ所で実施されている24時間型緊急一時保育サービスの定員は各1日6人。約3万世帯のひとり親世帯への日常生活支援事業の年間派遣件数は414件と、いずれも利用実績としては余りに少ないと言わざるを得ません。また、市の調査(*1)によると「トワイライトステイ事業」「ショートステイ事業」の認知度は、ひとり親世帯の1 割に満たず、必要としている人に制度が十分周知され、活用されているとは言いがたい状況です。
2015年にスタートする子ども・子育て支援新制度は、消費税財源から7000億円を活用するとしていましたが、国の子ども・子育て会議の議論を積み上げると、1兆1000億円程度の財源が必要となることも判明し、事業の絞り込みが行われています。市町村は、すでに、子育て家庭のニーズ把握のための調査を終えていますが、国で確保される財源も視野に入れながら2015年度から5カ年を計画期間とした子ども・子育て支援計画の策定を進めようとしています。
今こそ、子ども・子育て支援法に謳われた一人ひとりの子どもが健やかに成長することができる社会をめざし、子どもと子育て支援に積極的に投資する社会の合意をつくることに努力すべきです。潜在化しているニーズにも光をあて、多様な生き方・働き方をサポートする包括的な支援のしくみを整えていくことが必要です。
神奈川ネットは、地方版子ども・子育て会議に市民の参加を呼びかけ政策提案を行ってきました。2014年度も、新制度の施行に向けて重要な議論が続きます。一時預かりサービスや小規模保育など全国をリードしてきた現場の実践、神奈川の潜在力を生かし、当事者の視点も大切をしながら引き続き政策アクションに取組みます。
*1「横浜市母子家庭等実態調査H24年度」
対象:父又は母と20歳未満の児童がいる世帯で、同居の親族がいる場合を含む