「職場のパワーハラスメント」の予防・対策〜民間企業の模範となる取組みを〜

「職場のパワーハラスメント」の相談が増加傾向にあり社会問題化しています。かながわ労働センターに寄せられる「職場のハラスメント」に関する相談も、2007年の864件から昨年は1808件に増加、5年間で約2倍となり、労働散弾の総項目件数に占める比率も1割に近づいています。職場のハラスメントは社員のメンタルヘルスを悪化させ、職場全体の士気や生産性を低下させるとも指摘されています。今年3月には、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」において「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」が取りまとめられ、先頃、国として初となる職場のパワーハラスメントに関する実態調査の結果も公表されていますが、従業員の4人に1人がパワハラを受けたことがあると回答しています。

11月27日には、「ハラスメントのない職場づくりを神奈川から」という知事メッセージも発信され、商工労働常任委員会においても、労政福祉課から、弁護士・カウンセラーなどによる特別労働相談会や企業向けのセミナーの実施状況など報告されました。
私は、報告を聞き、県庁の職場環境はどうなのだろうか?ということが気になり、県職員等内部通報制度の状況を確認してみたのですが、毎年のようにパワーハラスメントの通報がありました。しかし、その多くについては「認められなかった」と結論づけられています。厚生労働省の調査でも、企業がパワーハラスメントの予防・解決のための取組みを進める上での一番の課題として、「パワーハラスメントかどうかの判断の難しさ」を挙げているように、「パワーハラスメント」の定義が明確でないという状況もあるのかもしれません。

私が相談を受けた事例は、パワーハラスメントが不当労働行為にあたると訴訟を提起、最高裁まで争って勝訴されていますが、その間6年の年月を費やされています。この方が勤務されているのは、県から認可を受けている福祉施設で、当然、毎年県の監査も受けています。福祉鑑査指導課には、横浜地裁や東京高等裁判所の判決についても報告していたにも関わらず、今年度の監査でようやく、パワーハラスメントについて事業者への指導がありました。法人鑑査においては人事管理も監査項目となっているはずですが、現状では、ハラスメントにまで目を向けた指導を行うというような視点がないのでしょう。

神奈川県においては、7月には、庁内むけのパワーハラスメントの防止などに関する指針も策定され「パワーハラスメント」の定義が明文化されたわけですから、職場のハラスメントを許さないということについて、より感度高くあってほしいと思います。
労政福祉課では、本年度「職場におけるいじめ・パワハラ問題」の解決に向け、中小企業における問題事例や取組事例についての調査と、調査結果を踏まえた対策マニュアルを作成します。民間に委託し中小企業を対象にアンケートを実施するとのことですが、かながわ労働センターに寄せられる相談事例も検証し今後に生かすことも提案しました。何よりも、神奈川県には、まず、民間企業の模範となるよう率先した取組みが求められます。