障がい者の外出支援制度見直しにあたって
横浜市会12月議会には、福祉特別乗車券(福祉パス)の利用者負担を謳う条例案(「横浜市福祉特別乗車券条例案」)が提案されています。
市は、これまで、福祉パス、 福祉タクシー券、ガイドヘルパー、ガイドボランティア制度など、包括的な障がい者外出支援制度の見直しを行ってきました。これについては、地域でもたくさんのご意見をいただき、ミニフォーラムを開催、移動サービス団体や児童デイサービス、子育て支援などに取り組むNPOの皆さんたちとも意見交換を続けてきました。
福祉特別乗車券は自力で移動が可能で公共の交通機関を利用できる障がい児・者にとっては使い勝手の良い制度ですが、移動支援の現場では、福祉特別乗車券やタクシー券だけではカバーできない移動困難事例も捉えています。
障がいのある子どもたちは、増加傾向にありますが、自宅から遠く離れた特別支援学校に通わなければならない子どもも多く、また、学校もしくはスクールバスのバスポイントまでの送迎を保護者が行っている状況があります。さらに、学校から放課後児童等デイサービスなどに通う場合も、児童デイサービス施設が少ないため、遠い施設に通わなければならず、その際の送迎が課題となります。また、地域作業所など通所施設への通所についても、送迎を行わない施設も多く、その場合、家族による送迎が強いられます。「年間84枚」の福祉タクシー券では毎日の通学・通所にはまったく足りませんし、障害の程度によっては、更にヘルパーや介助者も必要となり、券があるだけでは十分な制度ではありません。
ガイドヘルパーも不足しており、福祉有償運送(NPOなどが行う移動サービス)が、ガイドボランティア制度と組み合わせた移動支援を行うことで、何とか学校に通えるという子どもたちもいます。しかし、こういった取組みは、未だ全市的な取組みには至っていません。横浜市は、今回の外出支援制度の見直しにあたっては、「一部の人たちしか使えないサービスは公平性に欠ける」として、今後、ガイドボランティア制度と福祉有償運送との併用を認めないとしていますが、これは公平性の議論のすり替えではないでしょうか。むしろ、送迎支援にかかわる人材の育成とコーディネーター・事業者を増やし、誰もが移動支援を受けられる体制をつくることこそが求められます。
福祉パスの利用者負担額に注目が集まりがちですが、福祉パスに特化した議論ではなく、そもそも、包括的に外出支援制度を見直してきた経緯も踏まえ、障がい児・者とその家族ををとりまく状況について、一層の把握に努め、いまだ顕在化されていない多くの課題に向き合うところから始めなければなりません。
子育て支援策に具体化されている親の就労支援やレスパイトなどの施策、子どもの育ちを社会全体で支えるという理念は、障碍児施策においても貫かれるべき理念です。
今後も、障がい者の生活の課題を個別の家族の課題とせず社会化・制度化していくために制度提案に取り組みます。